1960年9月10日生まれ。イギリスのハンプシャー州出身。『アナザー・カントリー』(84年)で注目を集め、テレビドラマ『高慢と偏見』(95年)でブレイク。『英国王のスピーチ』(10年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞。主な出演作は『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ(01年、04年、16年)、『ラブ・アクチュアリー』(03年)、『マンマ・ミーア!』(08年)、『シングルマン』(09年)、『キングスマン』(14年)、『キングスマン: ゴールデン・サークル』(17年)、『メリー・ポピンズ リターンズ』(18年)など。
『英国王のスピーチ』でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、『ブリジッド・ジョーンズの日記』シリーズや『マンマ・ミーア!』などでも多彩な魅力を見せるイギリス人俳優、コリン・ファース。彼が、単独無寄港のヨットレース、ゴールデン・グローブ・レースで世界一周を目指すアマチュア・セーラーを演じた『喜望峰の風に乗せて』が、1月11日より公開された。
愛する妻と子どものために無謀にも思える挑戦をした男の孤独な闘いを描いた本作について、ファースに話を聞いた。
ファース:出発前夜においてもドナルドは、「船はまだ準備不足だ」と話している。だが、彼は出航しなければならなかった。周囲にそう言われたからね。彼が交わした契約書では、出航予定日に出航しなければ自宅家屋と会社を没収されることになっていた。完走しなかった場合もね。だからどうしても出航しなければならなかったのだ。
ファース:六分儀の指標を示すコンパスと風向計、それに耐久スキルも身に付けていたのだが、それでも遭難してしまうものなんだ。救助してくれる者も近くにいない。よっぽど運が良くて自分が発信するモールス信号が届く範囲に誰かがたまたまいた場合は別だけどね。今日において多くの人々が成し遂げる偉業を軽視するわけではないが、長期間に及んで彼が体験した孤立感のレベルを考えると、現代ではあり得ないことだと思う。
ファース:非常に小さな空間に身を置いているわけだ。全長40フィート(約12メートル)の船に、驚愕するほどに小さいキャビン(寝室)。息が詰まるほどに狭いキャビンと無限の世界である海との狭間に挟まれている。極端に広い空間と極端に狭い空間しか無い環境だった。
ファース:不確定要素との闘いだった。自然はこちらの意に沿ってはくれない。悪天候を望んでいる時は晴天になったりしてね。監督のジェームズ・マーシュはタンクの上での撮影に難色を示し、実際の海上での撮影を望んでいたから実際に海上で撮影したよ。夜間や嵐の場面ではタンクを使っての撮影が少々行われたが、基本的には大海原に出て撮影していた。ジェームズはとても賢く、非常に献身的であり、協調性にも富んでいる監督だ。
ファース:当たり前のことだが、役を演じるために急いで船の操縦の基本を身に付ける必要があった。できる限りの努力はした。映画に登場する船で操縦の練習をしたり、休暇で訪れたカンボジアの海岸から少し離れた島で双胴船を一人で操縦したりもしたよ。そのカンボジアの島でやっているうちに私自身、航海が大好きになったんだ。小さな船の上で一人、風との関係を築き始めた。
ファース:主人公の妻、クレア・クローハースト自身は非常に知性的で、洞察力があり、強い人間だ。レイチェルはそんな人物を演じるために頑張らなくても、クレアの性質を自然と描けてしまう。クレアはどこか皮肉的な面があり、同時に用心深い女性だ。ドナルドがやろうとしていることの複雑さを見抜く力のある女性なのだ。
ファース:ドナルドはヨットに降りてきた海鳥と親交を深め、その鳥について“はみだし者”という詩も書いている。彼にはそういう優しさがある。書いたものの中にも、良識と思いやりがあるんだ。理性と誠実さに重きを置き、公平であることがとても重要だった。だからこそ、自分が追い込まれてしまった落とし穴にこれほどまでに動揺してしまったのだと思う。
私はいかなる時も常に主人公に対して強い尊敬の念と共感を覚えた。問題が発生する度に自分のことのように思えた。人は皆、自分の能力以上のところに到達したいと思うはずだ。脚本を読んだ時、私は多くの人々の心に響くものがあると感じた。人は途轍もなく危険なことに取り組む。海上に出たことがなくとも、航海士でなくとも、冒険家でなくとも、明らかに過激な挑戦に出たことがなくとも共感できるはずだ。何か大胆なプロジェクトを遂行したり、リスクを背負ったり、自分に挑戦を課して何かを成し遂げようとした経験がある人なら尚さらだ。ドナルドがなぜそうしたのか私には理解できるよ。
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