【週末シネマ】ジブリ最新作は懐かしくて前向きになれる青春映画!
ちょっと年のいった方ならこの作品を見て、自分の青春時代を思い出したくなるはず。そんなノスタルジーを誘う映画が、7月16日から公開となるスタジオジブリ最新作『コクリコ坂から』だ。
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舞台は東京オリンピック開催を翌年に控えた1963年の横浜。主人公は、父を海で亡くし、仕事を持つ母を助けて下宿人も含めて6人世帯の面倒を見ている高校2年生の松崎海(声:長澤まさみ)。彼女は毎朝、海に向かって信号旗をあげるのが日課になっている。その海を、毎朝タグボートに乗って通学しているのが、もう1人の主人公で高校3年生の風間俊(声:岡田准一)だ。
2人が通うのは市内の同じ高校で、ここでは今、文化部の部室がたくさん入っている古い洋館・通称カルチェラタンを取り壊すべきか否かで小さな紛争が起こっている。新聞部部長でもある俊は、当然、カルチェラタンを残す派。ヒョンなことから俊と知り合った海は、いつしか彼らと共に、カルチェラタンを残すための手伝いをし始める。
映画は海と俊のほのかなラブストーリーを縦軸に、カルチェラタンを残す残さないの攻防を横軸にして進んでいく。さらに海と俊にはある秘密が隠されており、そこから、彼らの親世代の若かりし日が描かれるなど、親子2世代の青春が綴られていく。
見どころの1つが、古くて懐かしい風景だ。本作は1980年に「なかよし」で連載された少女マンガが原作。このマンガは80年代の時代設定だったが、それを63年に変更。これによって、古きものがいっぱいありながらも、新しいものが次々と誕生していく高度成長期が舞台となり、舗装されていない道路の上をオート三輪が走るなど古い街並みが描かれる一方で、新しい時代に向かって意気揚々としてい人々の活気あふれる姿も描かれていく。
主人公2人の魅力的なキャラクターにも引き込まれる。長女である海には、1つ年下でお気楽な空という名の妹と、中学2年生の陸という弟がいる。現代の話なら、妹や弟に対しぶち切れてもおかしくないが、海は文句を言わずにテキパキと仕事をこなす頑張り屋だ。まだまだ「長女」であることが意味を持ち、親を助けることが普通だった時代の話で、それだけに、海が俊と出会い、彼に惹かれていく様子からは、古き良き時代の青春の香が漂ってくる。
それもそのはず、実は本作は日活の青春映画、とりわけ吉永小百合主演の映画を参考にしているのだ。『赤い蕾と白い花』(62年)『青い山脈』(63年)といった当時の映画では、主人公たちの言葉に裏がなく、自分の気持ちをストレートに相手に伝えている。そうした話し方やコミュニケーションが本作にも反映されている。
また、物語後半に徳丸社長なる人物が出てくるが、そのモデルとなったのがスタジオジブリの創設者であり、徳間書店社長だった故・徳間康快氏。こんなところに遊び心が隠されているのもジブリ流だ。
メガホンを取ったのは宮崎駿監督の長男で、『ゲド戦記』で劇場映画デビューをはたした宮崎吾朗監督。『ゲド戦記』は興収75億円をあげ、2006年公開の日本映画ではNO.1ヒットとなった。本作では宮崎駿監督に「映画監督は2本目で決まる、これがダメなら監督なんてやめちまえ」と檄を飛ばされたそうで、そんな愛のムチも奏功してか、完成作は懐かしく、それでいて前向きにもなれる青春映画に仕上がっている。(文:ムビコレ編集部)
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