60年以上のキャリアを誇る大女優・香川京子。溝口健二、黒澤明、小津安二郎、成瀬巳喜男などそうそうたる巨匠監督の作品に出演してきた彼女が、日本人として、そしてアジアの俳優として初となるFIAF賞を受賞。これを受けて9月6日に外国人記者クラブで記者会見が行われ、香川と東京国立近代美術館フィルムセンター主幹の岡島尚志、東京国際映画祭事務局長の都島信成が出席した。
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FIAF賞は80ヵ国150団体から成るフィルムアーカイブ連盟が2001年に立ち上げたもので、映画保存に貢献した人々に進呈するもの。これまでにマーティン・スコセッシ(01年)、イングマル・ベルイマン(03年)、マイク・リー(05年)、侯孝賢/ホウ・シャオシェン(06年)など、世界各国の重鎮たちが受賞している。
岡島主幹は「香川さんはこれまでフィルムセンターに数々の貴重な資料を寄贈してくださり、また、映画保存のための発言やキャンペーンなどにも快く協力してくださいました。そして、これまでに代表作の写真やスナップなど300点ほど贈呈していただきました。そういう貢献が、主な受賞理由だと考えています」とコメントした。
一方、FIAFについてあまり知らなかったという香川は「これまで受賞されてきた方々のお名前をおうかがいして大変ビックリしました」と驚いた様子。「ぜひ、この受賞に恥じることのないような活動を、今後もしていきたい」と抱負を語った。
質疑応答では、数々の名監督・名俳優と仕事をしてきた香川に、誰が最も思い出に残っているかという質問が。香川は「女優でしたら田中絹代さん。『おかあさん』という作品でご一緒させていただいた大先輩なのですが、役になりきる様や、声をかけることもできない鬼気迫る演技はもちろん、生き方もいろいろと学ばせていただきました。また、作品としては溝口監督の『近松物語』」と回答。監督としては「溝口監督はまったく演技指導をしてくださらず、できるまで何回もやらせる。小津監督は逆に、全てを決めて撮影をされる」と振り返り、「溝口監督と黒沢監督は似ているんですよね。(作品に)女性があまり出てこないので、逆に(女優として)どう存在すればいいのかが難しい。やはり私にとっては溝口監督がすべてを教えてくださった方だと思っています」とも話していた。
また、後輩となる俳優や映画人へのメッセージを求めると、「日本映画に限らず、昔の素晴らしい作品を見てほしい。また、若い人にはいろいろなことに興味を持ってもらいたい。その時はムダだと思うこともあるかもしれませんが、ムダなことなんてないんです。私もキャリアが60年以上になりましたが、様々な経験が(人生を)豊かにしてくれたと思っています」と語った。
10月22日から始まる第24回東京国際映画祭では、「香川京子と巨匠たち」特集を開催。『近松物語』(溝口監督)、『東京物語』(小津監督)などが上映される。
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