借金を返すために殴られ屋をすることとなった男──映画を愛する彼が、殴られる度に愛する映画監督たちが撮った作品を思い浮かべ試練を乗り越えようとする姿を描いた『CUT』。西島秀俊と常盤貴子が共演するこの映画が11月30日に外国人記者クラブで上映され、イラン出身の名匠アミール・ナデリ監督がQ&Aを行った。
ナデリ監督は本作を撮った理由を聞かれると「私は人生の大半を、映画を撮り、映画を見て、映画を教えることに費やしてきましたが、今や世界中で、インディペンデント映画の存在する場所がなくなってきています。また、溝口健二、(イタリアの名匠)エルマンノ・オルミ、(フランスの名匠)モーリス・ピアラといった素晴らしい監督たちのことを語る人も少なくなっています」と嘆き、「そんな監督たちの作品を人々に知ってもらうには、この作品を今、撮る必要があったんです」と熱い思いを吐露。劇中で暴力が描かれていることについては「先ほど話したとおり、インディペンデント映画の現状に対する怒りからこの企画が生まれたから」と話していた。
また、日本を舞台にしたのは西島秀俊との出会いからだと説明。「一度、ニューヨークでこの企画を考えたこともありますが、私にとっては、企画の基となったジョン・カサヴェテス監督の生涯があまりに悲しくて、断念したんです。けれど、日本で西島さんと会ったときに、彼が主役でならこの作品を撮ることができると思ったんです。2つ目の理由は、私が古い日本映画について教えていたから。そして私の故郷であるイランと日本の文化は似ていると感じたからです」と語った。
本作で常磐が新境地を開拓しているのも見どころのひとつ。彼女について監督は「とてもプロフェッショナルな女優で、今までと違ったことをしたいと言ってくれた」と絶賛。「彼女に対しては『周りの人々が誰も振り向かない、ドブネズミのような人間を演じてほしい』とお願いしましたが、彼女は私の要求以上に演じてくれました」と満足げだった。
『CUT』は12月17日からシネマート新宿ほかにて全国順次公開される。
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