【元ネタ比較】『亜人』前編
主人公がいきなり“亜人”で置いてけぼり感ハンパない!
「good!アフタヌーン」に連載中の桜井画門原作(単行本1巻のみ作画:桜井画門、原作者:三浦追儺)によるコミック「亜人」が実写映画化された。2015年に3部作として劇場アニメ化され、2016年にはTVアニメシリーズ化もされた大人気作だ。
・お祭り映画を期待すると痛い目に遭う、シリアスでダークな『東京喰種』
人類と見分けのつかない異種の生物によって人類が脅威にさらされ、主人公自身が異種生物の立場として描かれるという設定で、「東京喰種」と設定は重なっている。連載開始も「東京喰種」が2011年なら「亜人」は2012年で、2作ともに今年になって実写映画化が公開となった。昨今穏やかでないアジア間の情勢を反映しているのでは?という穿(うが)った見方もできるが、純粋に漫画として惹きつけられる部分が多く面白い。
2作を混同してしまう人もいるかもしれないが、人類を捕食する「東京喰種」と違って、「亜人」は人類を自ら襲う性質ではなく、殺しても死なない不死身の生物。そのために世間では不気味がられ、政府は亜人を捕らえて秘密裏に生きたまま切断するといった非人道的な実験を行っている。
主人公の永井圭は成績優秀な高校生で、演じるのは佐藤健。え? 佐藤健が高校生役!?と思ったが、その点は社会人に変更されており、違和感はない。ただ、実写映画版は序盤からいきなり、圭が亜人と発覚して非道な実験が行われ、観客は置いてけぼりをくらう。
原作では亜人に関する授業が行われる学校生活が描かれたり、幼馴染であったのに今は圭が交流を絶った海斗との人間関係や圭の人となりが描かれている。そのうえで圭が亜人と発覚、そして絶縁していた海斗を頼って逃亡劇を繰り広げたのち、圭は捕らわれて被験体となる。それなのに、実写映画版では圭のバックグラウンドも何もないまま、突如として亜人として壮絶な実験を開始。こういう映画は、一般人の主人公が異種生物であったために人生が一変するというスリリングさを観客が味わうのが醍醐味だと思うのだが、共感もへったくれもあったもんじゃない。
映画は制限時間があることはわかるが、見ている方は感情に乗り切れないままどんどんと物語だけが展開していくことに……。『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督はやっぱり大味だなぁと思ってしまった(後編へ続く)。
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