・…中編「原作のデッカードはシブくてクールじゃない!」より続く
【元ネタ比較】『ブレードランナー 2049』後編
前作で日本人ウケのよかった“アジア感”は少なめ
35年ぶりとなる続編『ブレードランナー 2049』が公開される、SF映画の金字塔『ブレードランナー』シリーズ。原作小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』と映画版『ブレードランナー』は雰囲気も内容も違っている。
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原作ではレプリカントかどうかを見分ける過程を通して人間とは何か、自己とは何かを読者に暗に提示してゆくが、映画版ではレプリカント自体のアイデンティティに主軸を置くようにズレていっている。のちに公開された完全版のほうでは、デッカード自身がレプリカントかのように匂わせるカットも挿入され、原作ファンとしてはそういう方向性は要らないんだけどなぁ〜となんとも萎えてしまう。
また、映画版『ブレードランナー』と言えば、当時にそれまで描かれていた硬質で無菌なムードの未来感と違い、西洋と東洋が入り乱れた猥雑で無秩序な世界観を展開し、それは後続のSF映画に多大な影響を与えるほど画期的なものだった。
ハリウッド映画の中で日本語の看板が出てきて、日本語が飛び交うことも日本人にウケがよかった。デッカードが飲食店に入って注文を4つ頼むと、店主が日本語で「2つで十分ですよ」とたしなめる場面は、なんでもないシーンなのに日本の観客に強いインパクトを与えて、今でもファンがジョークに使うほどだ。
そんなアジア感は続編でも散りばめられているが、街のシーンが登場するのは全編の半分以下。体感では1割ぐらいだった。だからこの続編については、原作ファンよりも映画版のファンにオススメしたいが、前作のあの無秩序な街の雰囲気をただ味わいたいのであれば物足りないのではないかと思う。それよりも、前作でも描かれていたレプリカントの権利とは? 存在とは?といったテーマに興味があるのなら、見る価値が十分にあるだろう。(文:入江奈々/ライター)
『ブレードランナー 2049』10月27日より全国公開中。
入江奈々(いりえ・なな)
兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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