2017年の映画を総括。強い女性描く作品が年間興収1、2位を独占

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『美女と野獣』
(C) 2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
『美女と野獣』
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【2017年の映画を総括】前編
続編、リブート作も目白押し

1月に政権が交代し、共和党のトランプ大統領が就任した2017年。民主党支持者が多いハリウッドは、様々な面で見解が異なる新大統領を強く意識した1年だったように見える。

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顕著だったのは、ヒット作やアカデミー賞受賞作に多様性が増したことだ。映画の興行成績をリポートするサイト「Box Office Mojo」によると、12月17日現在、アメリカ国内の年間興収第1位はミュージカル映画『美女と野獣』(5億401万4165ドル)。2位は『ワンダーウーマン』(4億1256万3408ドル)で、上位2作とも女性が主役。前者はディズニーのアニメを実写化し、エマ・ワトソン演じるヒロインがより自立心のある女性として描かれた。後者はバットマンやスーパーマンなどが中心のDCエクステンデッド・ユニバースの作品。そこで女性ヒーローの活躍を、初めて女性の映画監督(パティ・ジェンキンス)が手がけたこと、DCエクステンデッド・ユニバース作品として興収の最高記録を更新したことも話題となった。全米映画俳優組合(SAG)賞キャスト賞受賞作『ドリーム』も、1960年代のマーキュリー計画に貢献した3人のアフリカ系女性の功績を描き、高く評価された。

アカデミー賞の結果には、昨年の「オスカー真っ白」騒動の反動がはっきりと表れた。オスカー前哨戦で各賞を制覇してきた大本命『ラ・ラ・ランド』を破った『ムーンライト』の作品賞受賞は、封筒の渡し間違いによる受賞作の誤発表と合わせて大きなインパクトを残した。アフリカ系で同性愛者の男性というマイノリティを主人公にした内省的な作品は、黒人映画のステレオタイプにも当てはまらない画期的な作風で、作品賞の他に脚色賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)を受賞した。その1ヵ月ほど前に開催されたサンダンス映画祭で注目され、全米年間興収13位にランクインした『ゲット・アウト』は現代アメリカでアフリカ系として生きる厳しさを思いがけない切り口で描いた、社会派ホラー。欧米では2017年の映画ベスト10で選出され、来年発表のアカデミー賞に向けての賞レースでも健闘中だ。

今年はヒット作の続編やリブート作も目白押しだった。全世界の興行収入で2位になった『ワイルド・スピード ICE BREAK』は『ワイスピ』シリーズの第8作。主演ポール・ウォーカーの不慮の死を乗り越えて完成させた感動の前作という高いハードルを超えて、1位の『美女と野獣』の12億6350万ドルに迫る12億3580万ドルを記録した。3位には『怪盗グルーのミニオン大脱走』(10億3340万ドル)が入り、他にも『スパイダーマン ホームカミング』、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』、『マイティ・ソー バトルロイヤル』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』など、全世界興収トップ10の大半は続編及びリブート作。大ヒットには至らなかったが、カルト的人気の『ブレードランナー』の35年ぶりの続編『ブレードランナー 2049』、『プロメテウス』の続編で『エイリアン』の前日譚に当たる『エイリアン:コヴェナント』も根強いファンが足を運んだ。真打ちは12月15日公開になったばかりのスター・ウォーズ/最後のジェダイ』。初日の北米での興収は1億470万ドルで、前作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の1億1900万ドルに次ぐ成績を記録した(後編へ続く…)。

後編「信仰、難民、貧困…不寛容が蔓延する時代に強いメッセージ放つ」に続く…

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