【週末シネマ】『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』
昨年、アメリカTV界のアカデミー賞に当たるエミー賞で作品賞ほか最多8部門を受賞し、1月のゴールデン・グローブ賞にも輝いた2017年を代表する海外ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』が、ついに日本でも配信公開が始まった。
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侍女とは、物語の舞台となる宗教主義国家「ギレアド共和国」に暮らす妊娠可能な健康体の女性たちを指す。環境汚染によって出生率がほぼゼロとなった社会で、彼女たちは政府によって管理され、富裕家庭の子どもを産む道具となることを強いられている。1985年にイギリスの作家マーガレット・アトウッドが発表した小説「侍女の物語」が原作だ。
ドラマは、主人公であるジューンが侍女たちの生活する施設に連行され、赤いローブと顔を覆い隠す白い帽子姿にされ、特権階級の司令官フレッドの家に仕えるところから始まる。彼女には夫も娘もいたが、無理やり引き離され、ジューンという名前すら奪われ、オブフレッド(Offred=of Fred。“フレッドの”の意)と名付けられている。侍女たちの名前は全て「〜の」と、仕える相手の所有を表す記号でしかない。厳しい監視下に置かれた彼女たちは月に1度、子どもを産めない相手の妻と3人で子孫を残すための“儀式”を執り行う。もし、いつまでも妊娠できなかった場合、さらに悲惨な運命が侍女たちを待ち受けている。
あらゆる権利、尊厳を踏みにじられた侍女たちと、恵まれた暮らしをしながら、子どもを産めないために侍女を頼らざるを得ない妻たち。それぞれの立場で理不尽な苦しみを強いられる女性たちの世界は、現実と無関係のディストピア物語のようでいて、世界のどこかで起きている差別や虐待に重ね合わせられる。さらに言えば、昨年就任したアメリカのトランプ政権の政治、大統領自身の言動などへの反発がドラマのテーマとリンクし、大きな反響を呼び起こしたのだろう。
抑圧された日々の合間に、オブフレッドがジューンだった頃の記憶のフラッシュバックが差し込まれる。ジューンと同様、訳も分からないまま「ギリアド共和国」の世界に放り込まれた視聴者はエピソードを追うに従い、一体世界に何が起きたのか、ジューンとはどういう女性だったのかを少しずつ知っていくことになる。サスペンスと、抑圧に抗い続ける女性の強さを妥協なく描くドラマが今後どんな展開を見せるか、目が離せない。(文:冨永由紀/映画ライター)
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』(全10話)は2月28日からHuluにて配信中(以降、毎週水曜日に1話ずつ追加予定)。
冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。
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