女性セクハラ問題で揺れる中、女性やマイノリティへのエールを送るスピーチが多かったアカデミー賞授賞式。受賞は逃したものの、監督賞候補となったグレタ・ガーウィク(『レディ・バード』)も脚光を浴びたひとりだ。女性監督としては史上5人目の候補となった。
・ゆっくりと、だが着実に理想へと進んでいくハリウッド/アカデミー賞授賞式を振り返る
77年にイタリアのリナ・ウェルトミューラーが『セブン・ビューティーズ』で候補になったのを皮切りに、ジェーン・カンピオン(94年『ピアノ・レッスン』)、ソフィア・コッポラ(04年『ロスト・イン・トランスレーション』)、キャスリン・ビグロー(10年『ハート・ロッカー』)がノミネート。ビグローだけが受賞している。
「監督賞にノミネートされるのでは」と期待が高かったのは『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンスだ。ワンダーウーマンが普通の人々のために立ち上がる内容が高く評価された。高評価もあり、米国では4億1200万ドルの興収をあげ、女性監督による史上ナンバーワンヒットを記録した。
ハリウッドでは、ガーウィクとジェンキンスに代表される女性監督の活躍が目立っている。3月9日に米国で公開された『A Wrinkle in Time』がヒット中のエヴァ・デュヴァネイも女性監督だ。
これまでもビグローやコッポラなど活躍が目立つ女性監督はいたが、ビグローなら社会派、コッポラなら女性目線と、監督の個性が際立つ作品が多かった。だが、『ワンダーウーマン』はアメコミヒロイン映画、『A Wrinkle in Time』はディズニーファンタジー。「娯楽映画として観客を楽しませる職人芸」が注目を集めている。『レディ・バード』はガーウィクの実体験から生まれた、監督の個性が際立つ作品ではあるが、米国では興収4900万ドルをあげ、製作・配給するA24最大のヒットを記録。3人とも男性監督に引けを取らないヒットメーカーとして脚光を浴びているのだ。
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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