【映画を聴く】『さよなら、僕のマンハッタン』前編
象徴的に使われるサイモン&ガーファンクル
マーク・ウェブ監督の新作『さよなら、僕のマンハッタン』が日本公開された。いまや『アメイジング・スパイダーマン』シリーズや『gifted/ギフテッド』でおなじみの……と紹介されることが多いウェブ監督だが、今作は彼の映画デビュー作である『(500)日のサマー』が好きな人にこそ見てほしい、ひとりの青年のほろ苦い成長物語である。
・[動画]マーク・ウェブ監督最新作は、名曲に乗せて送る、ほろ苦い青春の記憶/『さよなら、僕のマンハッタン』
LAを舞台に、ザ・スミスが好きなサエない会社員トムと同僚のサマーの恋の行方を描いた『(500)日のサマー』は、トムとサマーの煮え切らない関係性やサブカルチャーへの広範な目配せからウディ・アレン映画、特に『アニーホール』を連想せずにはいられない作品だったが、今作ではニューヨークを舞台に90年代ぐらいまでのアレン映画に出てきそうなロケーションを多用。誰もが憧れる“あの時代のニューヨーク”の香りを画面の隅々にまで漂わせている。
物語そのものは『アニーホール』というよりマイク・ニコルズ監督の『卒業』に近い。父の不倫相手と恋に落ちる作家志望のトーマスを演じるのは、イギリス出身のカラム・ターナー。当初は『セッション』のマイルズ・テラーが予定されていたらしいが、大人と少年の境界線に立たされたトーマスを、ターナーはほどよくセクシーな文学青年という感じで好演している。
・後編「さまざまな楽曲が有機的に物語とリンク! 深読みするのも楽しくなる映画」に続く…
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