前回のジョゼフ・ゴードン・レヴィットに続いて、今回もブルース・ウィリスと共演の若手男優に注目したい。足かけ25年でシリーズ第5作が公開になった『ダイ・ハード ラスト・デイ』でブルース・ウィリス扮するニューヨーク市警の刑事、ジョン・マクレーンの息子・ジャック役に抜擢されたオーストラリア出身のジェイ・コートニーだ。
無鉄砲な父親に反発し、疎遠になっていた息子はなんとCIAのエージェント。そうとは知らず、トラブルを起こした息子を引き取るために訪れたロシアでまた難事件に巻き込まれてしまうという展開。父と息子は衝突を繰り返しながら、敵と対決する。中心に立っているのはもちろんジョンなのだが、実際にアクションを起こして物語を動かしていくのは息子のジャックだ。今年57歳になるブルースに対し、ジェイは27歳。シリーズ主役の世代交代の兆しもうかがえる。
長身に鍛え上げた上腕二頭筋をこれでもかと誇示しながら、走って跳んで銃を撃ちまくるジェイは、1月に公開された『アウトロー』ではトム・クルーズの敵役を演じている。ブルースやトムといった超A級のスーパースターに、相棒あるいは敵役として自分と同じ土俵に上げてもいいと思わせる存在感を20代にして備えているのだ。ジェイはヒュー・ジャックマンや故ヒース・レジャーを輩出した名門演劇学校を2008年に卒業。プロの俳優になって5年も経たずに驚異的なスピードで出世を遂げている。
その秘訣は若者というよりもすでに大人の男を思わせる安定感と、確かな演技力ではないだろうか。ジャックの第一印象は冷静沈着で用意周到。よく言えば臨機応変、悪く言えば出たとこ勝負の父親とは正反対で、そんな点でも父子はいがみ合うのだが、その過程で徐々に“マクレーン家の男子”らしい熱血漢な面を見せていく。一方、『アウトロー』では、ぬめっとした薄気味悪さを漂わせ、生身の人間らしい感情は全く見せない。どちらも姿形はほとんど変えていないのに、ほんのかすかな表情の違い、身のこなしで、180度異なるキャラクターにリアリティを持たせる演技派なのだ。
プレミア上映や公開記念イベントに出席しているジェイ本人はまだ垢抜けない雰囲気で、人の好さそうな青年。一躍注目のスターとなっても、ハリウッド一辺倒にならず、地元オーストラリアで小規模な作品にも出演している。また、出世作となったTVシリーズ「スパルタカス」の主演俳優で親友だった故アンドリュー・ホイットフィールドの闘病生活を追ったドキュメンタリー映画『Be Here Now』(原題)の完成実現にも尽力している。本当にいい人なのだ。
人柄もよく、実力もお墨付き。先輩のヒュー・ジャックマンのように、アクションもシリアスもこなせる主演俳優への道を歩み始めたばかりだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『ダイ・ハード/ラスト・デイ』はTOHOシネマズ 日劇ほかにて全国公開中。
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