正月興行はどんな作品が話題になりそうか。最大の注目作が『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』だ。『ハリー・ポッター』の原作者が新たに描く魔法ファンタジー映画2作目で、前作は興収73.4億円の大ヒットとなった。本作は前作同様、11月23日から公開された。正月映画は12月公開が大半だが、競合作品のない早めに公開することで、シネコンで座席数の多いスクリーンを字幕版、吹き替え版の両方で確保。公開スタート時に一気に集客し、翌週以降も大きめのスクリーンを維持する配給戦略だ。公開後10日間で興収28.9億円、19日間で興収40.5億円。前作は12日間で31.4億円なので、ほぼ前作並みのペースといえそう。
『ファンタビ』に続くヒットが期待されているのが『シュガーラッシュ:オンライン』だ。ゲームの世界を舞台に、悪役キャラクターのラルフと少女ヴァネロペの冒険と友情を描いたディズニーアニメ続編。前作が30億円を記録している。本作には歴代のディズニープリンセスが揃うキラーショットがあるのが強みで、前作以上の大ヒットを記録する可能性は十分だ。
『ドラゴンボール』とは逆に、映画関係者が心配しているのが劇場版5作目『映画 妖怪ウォッチ FOREVER FRIENDS』だ。1作目は78億円の大ヒットとなったものの、回を重ねるごとに興収を落としており、前作は20.4億円。興収が下げ止まらないと、来年の劇場版が打ち切られる可能性が出てきそうだ。
邦画実写で期待が高いのが『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』。「大人が良質で泣ける邦画を見るならコレ」と評価が高い。配給元の松竹では18年の正月映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(興収27億円)のような大ヒットを狙っているといわれる。
このほか邦画実写では、中島哲也監督が岡田准一主演で製作したホラー映画『来る』、中島健人と中条あゆみで人気少女マンガを映画化した『ニセコイ』、平成ライダー勢揃いの『仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER』が控える。
洋画実写の注目作は『アリー/スター誕生』。女性スターの誕生と、彼女を見出した男性スターの転落を描くストーリーで主演はレディー・ガガ、相手役がブラッドリー・クーパー。彼女が数々の歌を披露していることと、音楽映画ブームが続いているのが追い風だ。
公開中の『ボヘミアン・ラプソディー』は快調に動員を伸ばしており、正月興行に入ってもロングラン上映されそう。
評価が分かれるのが、ミニオンを生んだイルミネーションの新作アニメ『グリンチ』だ。『怪盗グルー』シリーズ以外の興行成績を見ると、『ペット』(42.4億円)、『SING/シング』(51.1億円)と大ヒット作がある一方、『グリンチ』と同じドクター・スースの原作をアニメ化した『ロラックスおじさんの秘密の種』は10億円に届かなかった。本作はどちらになるだろうか。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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