平成初頭、バブルで膨れた資金力をテコに日本の家電メーカーはハリウッドに投資したが、軒並み苦汁をなめさせられた。
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89年にソニーはコロンビア・ピクチャーズ(現ソニー・ピクチャーズ)を48億ドル(当時のレートで6700億円)で買収。翌90年には松下電器産業がユニバーサル・ピクチャーズやユニバーサル・スタジオ、MCAレコードなどを抱えるMCAを61億ドル(当時のレートで7800億円)で買収する。だが、ソニーは経営者として迎え入れたピーター・グーバーとジョン・ピータースによる乱脈経営などで業績が悪化。94年にのれん代の一括償却として27億ドル、その年の赤字として5億ドル、計32億ドル(当時のレートで3200億円)を計上する。また松下は95年にカナダの大手飲料メーカーのシーグラムにMCA株の80%を70億ドル(当時のレートで5900億円)で売却。経営権を放棄する。
両社ほど注目を集めなかったが、パイオニアもハリウッドに投資している。
ハリウッドは優れた才能を持つ人材同士のコネクションで成り立っており、日本の家電メーカーとは文化が異なる。またコスト管理を徹底させる日本の製造業に対し、1本の製作費に100億円を超えることもあるハリウッドはコスト管理に甘くなりがち。様々な壁を超えることができず、松下とパニオニアはハリウッドから撤退する。一方ソニーは96年に新たな経営者ジョン・キャリーを迎え、業績の立て直しに成功。今では映画事業をはじめとするエンタテインメント事業がソニーを支えるまでに成長している。(文:相良智弘/フリーライター)
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相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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