一切の撮影NGなし! 熱演に興奮隠しきれず「生身だからこその迫力」

#性の劇薬#映画作りの舞台裏#石黒健太

「性の劇薬」より
「性の劇薬」より
「性の劇薬」より
「性の劇薬」より
『性の劇薬』公式サイトより

…中編「気鋭監督から迫られた“覚悟”」より続く

「こんなことをさせてしまって…」原作者が恐縮
【映画作りの舞台裏】『性の劇薬』石黒健太Pに聞く/後編

監禁・SM・調教を描きこんだ過激なBLコミック「性の劇薬」が実写映画化されることとなった。映画の製作を手がけるフューチャーコミックス代表取締役、石黒健太氏に話を聞いた。

BLは多様化して様々な作品があるが、しっかりとしたストーリーと共にエロを含む恋愛描写があるのが主流だ。そこにこそBLの魅力を感じる読者は少なくない。特に「性の劇薬」は、分類するならSM調教ものではあるが、根底にはシリアスなドラマがある。自殺しかけた男が“性”を感じることによって“生”を取り戻し再生していく物語だ。“性”であるエロ描写をしっかりと描かないと、自殺までしかけた男が再生していく姿に説得力がなくなってしまう。ただのエロではなく、“過剰なまでのエロ”こそが重要なのだ。

石黒氏も、「“性”であるエロ描写を中途半端にしてしまうと“生”のほうも薄れてしまう。それでは作品のテーマが伝えられない。そこを外すと意味がなくなってしまうので、R18+でなければ描けないと思っていました」と語る。

映像制作会社からは、「映画会社が制作していたら、R15+くらいでソフトに描いたかもしれない。作品への思い入れがある出版社だからこそ、R18+に舵を切れたのでしょう」と言われたほどの思い切った決断だ。

その意気込みを皆が共有して挑んだ撮影は順調に行われ、すでに撮影は完了している。宣伝戦略上、まだ多くを語ることはできないそうだが、原作をよく知る石黒氏でも「もう、スゴイのひとことです!」と興奮の色を隠せない。役者たちは文字通り、裸の体当たり熱演を見せてくれたのだとか。コミックの原作者である水田ゆき氏も撮影現場を訪れて、圧倒されていたというほど。水田氏は役者たちに「こんなことをさせてしまうことになって、すみません!」と恐縮していたという。いったいどれほどのこととなっているのか期待が募る。

オーディションで選ばれたキャストはどんな役者たちなのか、発表は9月になってからの予定だが、製作側の意気込みに応える意欲と演技力を併せ持ち、肉体美にも優れた役者たちが選ばれた。

「大手から小規模の芸能事務所まで80社以上にオファーをかけ、数百名を超える応募者の中からキャストを決定しました。正直な話、濃厚な男性同士のラブシーンも含むR18指定作品ということで二の足を踏んだ事務所や俳優さんも少なくありませんでした。集客が見込める有名俳優さんの希望に合わせてエロ描写をソフトにするという案もあがりましたが、それでは本作のテーマそのものが薄れてしまう。最終的には、この作品の内容を理解して頑張りたいという役者魂を持った方を選びました」

その言葉通り、役者たちは一切の撮影NGなしで演じ切ってくれたという。

「生身の人間が演じるからこその迫力って、やはりありますよね。まさに生々しさを感じるという……。だからこそ、正直言ってどこまで観客に受け入れてもらえるのか不安もあります。実写化でR18で、しかも映画館の大きいスクリーンで見るわけですから。でも、映画には電子コミック会社ゆえの憧れがあります。今の時代の電子コミックというメディアは、たいていスマホで読まれるんですよね。スマホはどこでも見ることができて便利ですが、読書中にもSNSの通知が来たりして集中しにくいですよね。それに比べると、映画はいったん映画館に足を踏み入れて上映が始まると集中して見てもらえる。しかも、わざわざチケットを買って見ることを選んで来てくれた方ばかりです。もしかしたらこの映画を映画館で見るということは、ちょっとだけハードルが高いかもしれない。でも、ハードルを乗り越えて見に来ていただくだけの価値が映画『性の劇薬』にはきっとあると、私たちは信じています」。

興行の目標は主要5大都市以上での公開だが、会社としても全国各地の映画館で上映されることを希望しており、上映を望む声が口コミで広がってくれることを期待している。

「ツイッターやSNSでどんどん声を上げてくれたら嬉しいです。『ぜひ、うちの地元でも!』と言ってくれれば実現するかもしれません」。(文:矢野絢子/ライター)

[『性の劇薬』作品情報]
公式ツイッター @seino_gekiyaku
公式サイト https://seino-gekiyaku.com
2020年、公開予定