【落語家・瀧川鯉八の映画でもみるか。/第7回】
東京は練馬区にある「としまえん」は遊園地にプール、スーパー銭湯まであるレジャーランド。
先日、閉園検討のニュースでも話題になった場所だ。
その隣にあるユナイテッド・シネマとしまえんに映画を見に行くのが最近のお気に入り。
魅力はたくさんある。
まず、ぼくは平日の午前中に映画を見に行くので、都営大江戸線で新宿から乗ると、行きも帰りも満員電車を避けられるのが嬉しい。
先日は仲間からプレゼントされた映画チケットを握りしめ、いま話題の超格差社会を描いた韓国映画『パラサイト 半地下の家族』を目当てに出掛けた。
喫煙者のぼくは一服するために喫茶店に入りたいところだが、駅の目の前にあるドトールに喫煙席はない。
あったところでタバコを吸いたいだけなのでコーヒー代はもったいない。
ところが隣の映画館には喫煙所がある。
なにがすごいって、映画を見なくても、つまりお金を払わなくても喫煙所に行ける導線が用意されているのだ。
としまえん付近で路上喫煙されてポイ捨てされるよりは使ってもらったほうがいいという判断だろう。
これは素晴らしく庶民に優しいアイデアだ。
常に喫煙所は満員。
おかげで、としまえんは綺麗だ。
しかも、タバコを吸うためだけに寄った人も映画を見ることがあるかもしれない。
いいことづくめ。
浮いたコーヒー代で隣にある牛丼屋に入った。
安くて旨くて早くてボリュームたっぷり。
ここまででもう大満足。
プレゼントしてもらったので、無料で『パラサイト』を鑑賞。
こんなにユーモアたっぷりで衝撃を受ける映画をぼくは知らない。
テンポよくリズミカルで飽きさせず、大笑いもできてブラックユーモア満載で、ジェットコースターのような展開。
映画にはまだこれほどまでにエンターテイメント性があったのか。
歴史に残る映画だ。
きっとこのコラムが掲載されるころにはきっとアカデミー賞作品賞に輝いていることだろう。
そうでなければならない。
こんなにも笑えて完璧な脚本は天才にしかできない仕事だ。
電車は空いている。
幸運だ。
ハンバーガーでも買って寝ようかと考えていると、仲間からお酒のお誘い。
タダ酒をしこたま飲む。
人生は上々だ。
家に帰って、ふと虚しくなった。
こんなにお金をかけなくても幸せで、でも少しでも得をしようと必死で、これでいいのかぼくの人生は。
こんな暮らしを続けていると、いつか心まで貧しくなってしまうかもしれない。
そうだ! お金持ちになろう!
具体的な計画はないけどね。
そう決めました。
※【鯉八の映画でもみるか。】は毎月15日に連載中(朝7時更新)。
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