カリスマ少女漫画家・大島弓子の自伝的エッセイ漫画を、小泉今日子主演で映画化した『グーグーだって猫である』(2月6日DVDリリース)。天才漫画家・麻子さんと飼い猫のグーグー、そしてアシスタントたちの姿を、優しく繊細なタッチで綴った作品だ。この心温まる作品について、犬童一心監督に話を聞いた。
──猫のグーグーのキュートさが印象的ですが、撮影は大変でしたか?
犬童一心監督(以下、犬童):犬って、ある程度“演出”できるのですが、ネコは演出できないんです。演出は何もしていなくて、ただ待っているだけでした(笑)。無理をさせるとダメなので、トレーナーさんが「(猫の)グーちゃんは(今日は)もうダメですね」と判断したら撮影をやめてしまうことも。無理強いしないことも大切だったんです。一番大変だったのは、(猫と)ツーショットの演技が多い小泉今日子さんだと思います。グーちゃんがOKになるまで、同じ演技を同じテンションで繰り返さなければならないから。
──小泉今日子さんの魅力について教えて下さい。
犬童:他の女優さんたちとは全く別の立ち位置にいる人。妖精のような人だと思います。撮影中は、気がつくと1人でいて、必要な時だけ戻ってくる感じ。演技も、「しなきゃいけない」と思っていないんじゃないかな。必要な時には演技するけれど、そうでない時には演技をしなくてもいいと自然に分かっている。経験によるものなのかもしれませんが、何もしなくても“場が持つ”という自信があるのかもしれませんね。実は彼女も僕も大島弓子さんのファン。僕がファンクラブの部長で、彼女が副部長みたいな感じでした(笑)。部長のダメなところを、すごく頭のいい副部長が補ってくれる感じで。脚本は、すごく分かりづらい部分もあるのですが、内容を深く理解してくれていて、例えば他の人に分からない部分があったら、小泉さんが代わりに説明したりしていましたね。
──大島弓子さんの作品は、どんなところが魅力なのでしょうか。
犬童:トラジコメディ(悲喜劇)というか、主人公がタイトな状況にある物語を、コメディとして描こうとするところでしょうか。日本ではあまりないタイプの作品ですよね。実は彼女は“団塊の世代”なのですが、団塊の世代の男性社会に対して、常にアンチでいると感じています。引いたところから全体を見渡せることが賢さだと思っている男の人たちに対してアンチなので、“個”しか描かない。例えば、女の子を描くとしたら、その子だけを描き、「だから日本がどうだ」とか「だから社会がこうだ」とは絶対言わない。彼女自身でアンチを主張することがないので分かりづらいのですが、男性社会にアンチでいる作家というのが、孤高の人でもある大島さんの魅力だと思います。
『グーグーだって猫である』DVD ニャンダフル・ディスク付き【初回限定特別版】/2月6日発売
監督・脚本:犬童一心
原作:大島弓子
出演:小泉今日子、上野樹里、加瀬 亮、森三中
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