直木賞作家の大沢在昌がジョージ・クルーニー主演作『ラスト・ターゲット』を絶賛!

大沢在昌(左)と『ラスト・ターゲット』主演のジョージ・クルーニー(右)
大沢在昌(左)と『ラスト・ターゲット』主演のジョージ・クルーニー(右)
大沢在昌(左)と『ラスト・ターゲット』主演のジョージ・クルーニー(右)
『ラスト・ターゲット』
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7月2日より公開となる『ラスト・ターゲット』は、引退を決意した孤高の暗殺者が引き受けた最後のミッションと、その背景に張り巡らされた恐るべき罠を描いたスタイリッシュサスペンス映画だ。「新宿鮫」などで知られる直木賞作家の大沢在昌がこの作品を絶賛! ジョージ・クルーニー扮する主人公の心の動きを捉えた、コメントエッセイを寄せている。

『ラスト・ターゲット』作品紹介
[動画]『ラスト・ターゲット』予告編

大沢に映画を見てもらった理由について、同作を配給する角川映画宣伝部では「大沢氏はこれまで、小説推理新人賞、吉川英治文学新人賞、直木賞、柴田錬三郎賞、日本ミステリー文学大賞など数々の受を受賞している日本のハードボイルド作家の巨匠。映画『ラスト・ターゲット』にてジョージ・クルーニーが演じる主人公の生き方は、こだわりを持った男の究極の美学、ハードボイルドであり、大沢文学のキャラクターにも十分通じるところがある。まさに大沢氏こそが映画の魅力、見所を的確に捉えてくださると思いました」と話している。

大沢氏の『ラスト・ターゲット』に関するコメントエッセイは以下の通り。

殺人を生業とする者の心が豊かである筈がない。おそらくは空虚で、あるとしても怒りや恐怖でしかない。
白い雪原で始まる序章には、ジョージ・クルーニーが演じる主人公の内面が描かれている。雪におおわれ隠されていた恐怖と怒りが、一発の銃声とともに露わになる。
アクションよりも静謐が心に残る映画だ。
イタリアの田舎町で平和を求めているかのように見える主人公だが、観客は、それが決して与えられないことを映像から予感する。
静謐と暴力は、実は相性がよい。音楽すら最小限に抑えられた映像は、破局へと向かう内圧をじょじょに高めていく。
殺し屋が娼婦と恋をするのも必然だ。体がつながることから始まった関係は、時間をさかのぼるようにぎこちない恋にかわっていく。
「いつものところ? 忘れた」
と答える娼婦は、空虚な心しかもたずに生きてきた殺し屋には愛おしい。
明るく積極的なアメリカ人ヒーローの役が多かったジョージ・クルーニーが、孤独を恐れる寡黙な中年男を淡々と演じている。原題が「アメリカ人」というのも、そっけなく、しかしぴったりだ。
静けさと空虚のくりかえしの果てに、一瞬だけ夢見た豊かな人生に彼は手をのばす。
観終えて心に残るのは、鮮やかな肉体の動きではない。むしろたどたどしいほどに、孤独から逃れようともがいた男と、彼を破局へと導く女の、美しくも哀しい姿だ。

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