ガス・ヴァン・サント監督の『永遠の僕たち』は、両親の死を受け入れられずに生きることから逃げている少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)と、生きることを楽しんでいるのに死期が迫っている少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)との一風変わったラブストーリーだ。
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話はさかのぼるが、筆者がガス・ヴァン・サント監督の作品を初めて映画館で見たのは『ドラッグストア・カウボーイ』(89年)だった。ジャンキー4人組の破滅的な逃避に涙しながらもマット・ディロンの長い脚に驚愕した。続く『マイ・プライベート・アイダホ』(91年)では、リバー・フェニックスとキアヌ・リーブスの微妙な関係が切なくてかっこよかった。
当時ティーンエイジャーだった私は、退廃的な若者を描いているにもかかわらず極悪さがなくてきれいな印象を残すこれらの映画が大好きで、ビデオを借りて何度も見た。あれから20年が経ち……。こちらはすっかりおばさんになったというのに、『永遠の僕たち』を撮ったガス・ヴァン・サント監督の感性は若いままだった! 相変わらず若者に優しい視線で寄り添い、痛みや切なさと共に青春のきらめきを描き出していた。自身が書いた脚本であれ他人の書いた脚本であれ(本作は後者)、いつも彼のカラーが色褪せずに出ている。そのことが驚きであり、嬉しかった。
話を『永遠の僕たち』に戻すと、生に向かうイーノックと死に向かうアナベルは正反対の状態にあるけれど、死と向かい合わざるを得ないという共通点によって惹かれ合っていく。そんな2人を結び付ける天使のような存在が、イーノックにしか見えない肉体を持たない存在のヒロシ(加瀬亮)だ。ヒロシは第二次世界大戦で戦死した日本人の特攻隊員の霊で、イーノックの「友人」である。3人は、それぞれが死を理解して受け入れ、次の生に繋げるために、このタイミングで出会い、互いに助け合っている。
目に見えない存在も、肉体を持った人々と同じように当たり前に登場させているのがとても面白い。多くの人々が精神世界に関心を持つようになった現代に合った描き方だと思う。ガス・ヴァン・サント監督は今を意識しつつ、昔から変わらない独自の感性を保ち続けている。だからこそ、彼の撮る作品はいつも新しい感じがするのだろう。
新しいといえば、イーノック役のヘンリー・ホッパーは昨年亡くなったデニス・ホッパーの息子だが、これが商業映画デビュー作になる新星だ。この映画は、ヘンリーの顔のアップから始まり、ヘンリーのアップで終わる。その顔は、若さゆえの繊細で混沌とした時期から大人になるほんの一時にしか見られない輝きを帯びている。その輝きは演技で出せるものではないので、こういう時期の、しかも役にふさわしい俳優をキャスティングできたことは、作品にとってすごくラッキーだったと思う。そして、彼の顔は、映画の始まりでは傷つきやすくて不安定な印象だけれど、終わりでは少したくましくなっている。だから、重く悲しい物語ではあるけれど、後味はさわやかだ。そんな表情で終わらせるところもまた、青春映画の名手ガス・ヴァン・サント監督らしい。
『永遠の僕たち』は12月23日よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国順次公開される。(文:秋山恵子/秋山恵子)
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