企業買収の熱い攻防を描いたNHKドラマ『ハゲタカ』。世界で最も権威ある国際番組コンクール「イタリア賞」など数々の賞に輝いた傑作ドラマが遂に映画化! 6月6日の全国公開に先駆けて、5月11日に都内のホテルで完成披露記者会見が行われた。
出席したのは、ドラマに続いての出演となる大森南朋、栗山千明、中尾彬、柴田恭兵に加え、新たなキャストの玉山鉄二、高良健吾、遠藤憲一ら俳優陣と大友啓史監督、プロデューサーの訓覇圭(くるべ・けい)。日本の大手自動車会社買収をめぐり、大森演じる天才ファンドマネージャーと玉山演じる中国系巨大ファンドを率いる男との戦いが、緊迫感あふれる映像で描き出される。
主演の大森は、「ドラマの時のテンションを再現できるかが心配でしたが、(テンションが)戻ってきて、やりきった感じがあります」と満足そうな表情。だが、時に外国語も混じり経済用語も続出するセリフの多い台本には苦労したようで、「(もし続編があったら)セリフは少な目にしていただけると(笑)。それから、海外が舞台だと英語が大変になってくるので……」と希望していた。
リーマンショック、派遣切りなど、昨秋以降の激変する経済状況を素早く取り入れた台本のリアルさも話題だが、俳優陣にとっては台本の度重なる変更はかなりの負担だったらしく、大森は、「去年の末に派遣切りのニュースが流れ始めたとき、『また台本が変わるんだろうなぁ』と思ったらやっぱりそうで……(笑)。できれば経済が安定していたときに撮ってほしかった」と嘆き気味だった。
そんな大森のライバルを演じた玉山は、「映画からの参加で、期待と共に不安や恐怖もありましたが、2〜3年後の近未来日本を映し出したような硬派な作品になっています」と出来映えに自信を見せた。演技派たちが火花を散らす撮影はやはり大変だったようで、「今までのドラマや映画の現場とは違う緊張感があり、カメラの回っていないときにも糸が張りつめたような感じでした」とのこと。だが、撮影に全力を注いだ結果、「クランクアップしてから2週間くらいは抜け殻のようになってしまって、普段の生活には戻れない感じでした」と苦笑いを浮かべていた。
自動車会社の社長を演じた遠藤は、自動車の慣れない専門用語に苦労したそうで、「久々にNGを10何回も出してしまい、役者を続けられるのか不安になった」という。これまではヤクザや犯罪者役を演じることが多く、「何年も前に柴田恭兵さんが主演した『あぶない刑事』に犯人役で出演していたのですが、今回は逮捕もされず、アクションもなく心情を(柴田と)2人で語り合っているのが不思議な気分で、時の流れを実感しました」と我が“出世”を思ってか遠い目をする遠藤。だが柴田に、「僕はずっと犯人だと思って演じてました」とクールに返されて苦笑していた。
若手の高良が演じたのは、買収騒動に翻弄される自動車会社の若き派遣工。演じた感想について彼は、「派遣工という仕事は、とても役者に似ている部分があると感じ、台本を読んでいて胸が痛くなりました」と浮き沈みの多い仕事の不安定さについて言及し、「いい日本になればいいなと思った」とかすかな笑みを浮かべていた。一方、ベテランの中尾が演じたのは銀行の頭取。予告編でも腹に一物ありそうな雰囲気が印象的だが、「私が映ると悪そうに見えるでしょ? でも実は私が一番いい人間なんです。しっかり書いておいてくださいね」と記者たちに念押ししていた。
ドラマの見どころについては、「緊迫感のある作品。他人事ではなく見られるところがたくさんあると思うので、ハラハラドキドキして見ていただければ」と栗山。大森は、「ドラマの時から誠実に人間ドラマをやりたいと思っていました。非常に骨太のドラマになっていると思うので、いろいろな人に見てもらえたら嬉しい」と期待を語っていた。
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