新党を立ち上げ、第3極の結集を促すなど、政局の行方を左右するキーパーソンとして今もっとも注目を集める前東京都知事の石原慎太郎が、都知事辞職を表明した翌日の10月26日にTOHOシネマズ六本木ヒルズ で『青木ヶ原』の舞台挨拶に登壇。大勢のマスコミが集まったこの日の模様をレポートしよう。
石原前都知事が企画・原作で関わった『青木ヶ原』は、自殺の名所・青木ヶ原を舞台にしたある男女の魂を揺さぶる悲恋物語。この日の舞台挨拶に登壇したのは石原前都知事のほか、キャストの勝野洋、矢柴俊博と新城卓監督。
新城監督は「今日はお忙しいなか、お越しいただきありがとうございます。ウィークデイのど真んなかなので人が集まるかどうか心配していましたけど、幸い、昨日、石原さんがドデカイ爆弾をぶん投げたもんですから、きっと来るだろうと思って期待しておりました」と挨拶。これに対し石原前都知事は「んなもん、なくても来るよ」と豪語。
新城監督と組むのは『秘祭』(原作・脚本)、『俺は、君のためにこそ死ににいく』(製作総指揮・脚本)に続いて3作目となることについて、石原前都知事は「この人はなかなか腕を上げてきたと思うんだけど、ガラが悪いせいか作品の評価がイマイチなところがある」と独特の言い回しで褒めると、「今度は3本目ですけど、とってもいい映画、やっぱり映画はいいなと思いましたが、この作品の唯一の欠点はね、僕のセリフが短いことだよ」と話し、笑いを誘った。
また、石原前都知事は「みなさんは知らないだろうけど、私は映画を2本ほど監督していて、フランソワ・トリュフォーに影響を与えた」と切り出した。その2本とは『若い獣』(58年)と『二十歳の恋』(62年)で、『二十歳の恋』はパリ、ローマ、東京、ミュンヘン、ワルシャワの5都市を舞台に恋と青春をテーマにしたオムニバス映画。トリュフォーがフランス篇を監督している。
「僕はあの頃、フランス語が上手かったのでトリュフォーと話して、君が始めたヌーヴェルヴァーグは誰の影響を受けたんだと聞いたら、『名前は知らないが、ある映画を見て非常に印象的だった』と言う。それが『浜辺の情熱』っていう映画らしく、そんなの見たことがない、どういうストーリーだって聞いたら、私が脚本を書いた『狂った果実』だった」
さらに、「水野(晴郎)さんじゃないけど、映画は本当にいいもんですな。私も知事をさっさと辞めて映画監督をやる予定だったんですけど、ちょっと道を間違えてね、この国を見てられないから、あとちょっと(政治家を)やりますけど、その後は新藤兼人じゃないけど、90歳を過ぎても映画を撮るからね」と堂々の映画監督宣言をし、観客からは温かな拍手を贈られていた。
『青木ヶ原』は2013年正月第2弾として、有楽町スバル座ほかにて全国公開となる。
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