【週末シネマ】26歳にして驚きの完成度。気鋭監督が描く“修羅場と化す家族の群像劇”

『アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち』
(C) 2011 DIMS Film, LLC. All Rights Reserved.
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『アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち』

長男の結婚式が執り行われる実家へと車を走らせる中年女性・リン。同乗するのは、花婿となる息子の異父弟2人。いかにもティーンエイジャーらしい小生意気な口調のエリオットはドラッグ中毒で、ぽちゃっとした弟のディランは軽い自閉症であることが親子の会話から明らかになっていく。息子たちの言動にいちいち過剰に反応するリンの神経衰弱気味な振舞いから、その後の波乱の展開が見て取れる『アナザー・ハッピー・デイ』。親族が久々に顔を揃える晴れの日が、互いのエゴや悩みをぶつけ合う修羅場と化す家族の群像劇だ。

[動画]『アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち』予告編

離婚して、それぞれが新しい伴侶と家庭を築き、異母・異父のきょうだいがどんどん増えていく。そんな現代の家庭像がリアルに描かれる。花婿・ディランはリンの前夫と後妻が引き取って育て上げた。立派に成長したディランに対して、リンが現在の夫との間にもうけた息子2人は前記の通り。自ら引き取った前夫との間に生まれた娘は自傷行為を繰り返し、全身傷だらけ。式にはもちろん自分本位の前夫、何かにつけてリンといがみ合う後妻とその娘もやって来る。口さがないリンの姉妹、おおらかな性格のリンの現夫といった面々を受け入れる年老いた両親もまた、認知症の夫を妻が介護するという大変な状況だ。

彼らはそれぞれの抱える問題にとらわれ、他者を思いやる余裕などなく、何かを望むばかり。体裁を繕おうとしたり、無神経に相手を傷つけたり、むき出しの感情が渦巻く凄まじさだが、1つひとつのエピソードに身につまされるものを覚えるのも確か。結婚式が舞台の群像劇というと、ロバート・アルトマン監督の『ウエディング』(78年)という傑作があるが、本作が描く、家族や親戚であるということの甘えが生み出すある種の残酷さは、むしろ小津安二郎の『東京物語』(53年)にも通じるように思える。

レオナルド・ディカプリオと親子を演じた『ボーイズ・ライフ』(93年)の、男運に恵まれない壊れ気味の母親役が印象深いエレン・バーキンがリンを演じ、製作も兼ねている。『少年は残酷な弓を射る』で鮮烈な印象のエズラ・ミラーが毒舌のドラッグ中毒少年を好演。自傷癖の娘の痛ましさを繊細に演じたケイト・ボズワース、押しの強い派手な後妻を演じたデミ・ムーアの熱演、老親役のエレン・バースティン、ジョージ・ケネディの存在感も特筆に値する。

オスカー女優から新進気鋭の若手まで、きっちりと演出してみせた監督は、『レインマン』などで知られる名匠バリー・レヴィンソンの息子で今年27歳のサム・レヴィンソン。脚本執筆時は24歳、撮影時は26歳という若さだが、人物描写の的確さには驚かされるばかり。第27回サンダンス映画祭脚本賞受賞というのもうなずける。(文:冨永由紀/映画ライター)

『アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち』は12月1日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開される。

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