言いたいことは言う!スパイク・リー監督の気骨ある魅力を解き明かす
7月25日から公開される『セントアンナの奇跡』。イタリアのトスカーナを主な舞台に、第2次世界大戦で戦ったアメリカの黒人部隊バッファロー・ソルジャーの兵士たちとイタリア人の少年の交流を描いた感動作だ。監督は、黒人の姿を描き続けてきたスパイク・リー。公開を控えた7月14日に、リー監督作品に詳しいDJ兼音楽プロデューサーの高木完がトークイベントを行い、映画について、そしてスパイク・リーの魅力について語った。
日本のヒップホップを牽引する1人である高木。『ドゥ・ザ・ライト・シング』(89)でブレイクしたリー監督について、「(黒人向けに作られた)ブラック・エクスプロイテーション映画は好きじゃないと明言し、まっとうに黒人の映画を撮りたいと、ずっと言っていた人。そのスタイルで圧倒的な支持を受けたけど、黒人の普通の生活をリアルに描きすぎてイヤだと言われたりした。単なるカリスマではなく、必ず論争を巻き起こしてしまう人」と説明。
「愛情を込めて(映画を)作っている分、リアルさが出ていて、例えば夏のシーンだと、熱さや熱気がムンムン匂ってくる」と、その作品世界を絶賛し、「『マルコムX』くらいから作風が変わってきて、ただ論争を巻き起こすのではなく、さりげなく作品の中で問題提起するようになった。作家として成熟してきて、それが『セントアンナの奇跡』に結びついた」と語った。
そんな『セントアンナ〜』については、「誰が見ても傑作と思う映画になっている。この映画は単純にグッときて、エンディングとかは泣いちゃうしね。そんなスパイク・リー作品は初めて」と、円熟味を増した才能を讃えていた。
一方で、今も変わらない、監督の気骨ある人柄に触れ、「(相変わらず)思ったことは、言わなくてもいいことまで言っちゃううんだよね。クリント・イーストウッドとケンカしたり」と苦笑い。昨年のカンヌ国際映画祭で、イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』に黒人兵士が出てこないとリー監督が批判、イーストウッドが「黙ってろ」と反撃したことから展開した舌戦にも言及していた。
さらに話題はオバマ大統領のことへと発展し、「彼はオバマ支持で、大統領になったことに関しては相当感慨深いものがあったと思うけど、きっとオバマ大統領にも言いたいことがあると思うよ」と推測。「オバマとミシェル夫人は、初デートで『ドゥ・ザ・ライト・シング』を見に行ったらしいし」と、大統領とリー監督の意外な結びつきについても話していた。
『セントアンナの奇跡』は、7月25日よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開される。
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