スタジオジブリの最新作『かぐや姫の物語』の中間報告会見が9月17日に都内スタジオで行われ、プロデューサーの鈴木敏夫と西村義明、主人公・かぐや姫の声を担当した新星・朝倉あきが製作エピソードなどを語った。
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同作は、『火垂るの墓』(88年)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(94年)などの高畑勲監督の最新作。2005年に企画がスタートして以来、足かけ8年に渡り作られ、当初は現在公開中の『風立ちぬ』と2本同時で今夏、公開される予定だった。
だが、遅筆で知られる高畑は「遅れ」の常習犯。今月末の完成(予定)に向け、77歳の老体にむち打ち目下、深夜に至るハードワークをこなしているというが、西村プロデューサーによるとまだ全体の3分の2しか完成しておらず、重鎮・鈴木プロデューサーは「完成するの?」と苦笑い。一方で、「若い頃から粘る人」と、妥協しない姿勢を明らかにした。
会見では先日、引退会見を行った宮崎駿とのエピソードも明かされた。鈴木プロデューサーによると、当初、宮崎は『となりのトトロ』の監督を高畑にやってもらいたいと思っていたそうだが、熱心な説得にも関わらず高畑監督は引き受けなかった。その理由を高畑は鈴木プロデューサーにだけ漏らしたそうで、「高畑さんは『原作者は宮崎駿ですよね。絵を描くのも宮さんですよね。その間の監督はサンドイッチでつらいですね』って言ったんです」と明かした。
また、高畑が監督、宮崎が作画を担当した名作『アルプスの少女ハイジ』と『かぐや姫』との共通点も明らかに。鈴木プロデューサーは、原作「竹取物語」には描かれていないかぐや姫の内面を描くことで137分(予定)の映画にしたと明かした上で、「ハイジ」の原作も大変短く、彼女の心の内を描くことで30分×1年間のテレビアニメにしたと説明。「『かぐや姫』の企画を宮さんに話した瞬間、宮さんは『バクさん(高畑勲)は『ハイジ』をやろうとしているんだよ!』と言ったんです。『ハイジ』の製作は非常に思い出深かったようで、アニメ製作の終了後、宮さんが『いつか日本を舞台に「ハイジ」を作ってみたいですね』と言ったら、高畑さんは『それはやるべきですよ』と言ったそうです」と、知られざるエピソードを披露。『かぐや姫』には『ハイジ』を彷彿とさせるシーンがいくつも登場するとも話していた。
西村プロデューサーによると、本作の原点は「現代の少女を平安時代に放り込んだらどうなるだろうという物語」で、主人公の声優について高畑は、受け身の芝居ではなく自立している印象を与えることにこだわったという。これについて朝倉は、「大勢の求婚者に無理難題を押しつけるときの声は、まるで結婚に興味がないもので、それを表現するのが難しかった」と明かす一方、「誰のモノにもならないという姿勢が格好良かったです」と、現代的な女性像への憧憬を口にした。
主に、声の収録を先に行うプレスコで作られた本作。会見では昨年6月に亡くなった地井武男が翁(おきな)の声を担当していることも明らかになり、共演した朝倉は、その迫真の演技に本読みのときに涙してしまったと語った。
手描きの線を生かした水彩画のようなタッチの映像が印象的だが、軽やかに見えるこの絵をアニメーションにするのは非常に大変で、技術的にジブリ内での製作はできず、高畑は本作を作るために新たなスタジオを設立したという。高畑自身もチラシに「今日のひとつの到達点」と書いているが、鈴木、西村両プロデューサーも、10年後に振り返ったとき、アニメーションのエポックメーキングになっているはずだと断言。西村プロデューサーは、来月78歳になる高畑にとって「これが最後の最高傑作になるとスタッフは確信しています」と話していた。
『かぐや姫の物語』は11月23日より全国公開される。
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