ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
ひょろっとした少年体型に、真っ白で血管が透けて見えそうな肌。赤い髪。神経質そうな眼差し。線の細いこの風情は好き嫌いが分かれるところだが、好きな人にはたまらない、直球ストライクなこの容姿を活かして上昇気流に乗りつつあるのが、今年24歳のケイレブ・ランドリー・ジョーンズだ。
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公開中の『ビザンチウム』では、イギリスの保養地に暮らす青年役。白血病を患う孤独なフランクは、町に流れて来た美少女・エレノアに恋をする。だが、彼女は16歳の姿のまま200年もの月日を過ごして来たヴァンパイアだった。温かい家族に囲まれていても、真の理解者に恵まれず、言いようのない寂しさを噛みしめていた彼とエレノアの魂が呼応し、共に歩もうとする様子は、あの萩尾望都の名作「ポーの一族」をちらりと思い出させもする。
憂いを帯びた瞳や繊細な外見がいかにもイギリス風なのだが、実はテキサス出身のアメリカ人。デビュー作はコーエン兄弟の『ノーカントリー』で、ラスト近くにハビエル・バルデム扮する殺し屋が起こす自動車事故を目撃する少年の1人を演じている。正直言って、まったく印象に残らない。Tシャツにジーンズで自転車を乗り回す、どこにでもいる男の子。声もまだ幼いし、何よりぽっちゃりしているので、改めて見返さないかぎり、あの太め少年と現在のケイレブが同一人物として繋がらない。
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でも、クールに決める二枚目ではなく、やや三枚目で『ハリー・ポッター』シリーズのロン(ルパート・グリンと)のような雰囲気。6月に公開された『ハード・ラッシュ』では、マーク・ウォルバーグの義弟でドラッグの運び屋の青年役。大量のブツを運ぶ途中でヘマをしでかし、稼業から足を洗った義兄を窮地に立たせる役どころだ。つまり、これまで演じてきた役の大半は、気はいいが、あまりサエない男の子だった。
そんな彼が今まで見せたことのなかった表情で、文字通り体を張って、退廃的ともいえる美しさを放出させたのは、5月公開の『アンチヴァイラル』だ。デヴィッド・クローネンバーグの息子、ブランドンの長編デビュー作で、ケイレブはセレブリティから採取したウイルスの密売に手を染める注射技師を演じた。同じ病気を患ってでも繋がりを持ちたいという極端な願望を通して、セレブ礼賛の風潮に一石を投じる挑戦的な内容で、ウイルス培養に自らの肉体を使って深みにはまっていく青年の地獄の彷徨を美しく演じている。
ちなみに、この役をどうしても演じたくて、クローネンバーグの拠点があるカナダまで赴いたという行動力の持ち主。休みの日は部屋にこもって映画を見続けるシネフィルでもあり、出演作選びのセンスもなかなかのもの。現在公開中の『わたしはロランス』のグザヴィエ・ドラン監督が主演も兼ねる新作『Tom a la ferme(原題)』にも出演している。1989年生まれで同い年のドランやクローネンバーグ(80年生まれ)といった若い監督のみならず、『ビザンチウム』のニール・ジョーダンや主演が決定している『Queen and Country(原題)』のジョン・ブアマンなどの名匠とも組み、可能性をどんどん広げているところ。作品によってガラリと雰囲気の変わる彼が、次はどんな顔を見せてくれるのか、楽しみだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
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