【元ネタ比較!】2014年も漫画の映画化が目白押し/ドラえもんの初3DCGはどうなる!?
慢性的なネタの枯渇もあるだろう。また、もとから知名度や人気が見込まれるメリットもあるし、はたまた小説とは違ってはじめから視覚化された媒体だから映像化しやすいという点も挙げられる。そんな安易な大人の事情が出発点なのか、漫画は映像化のターゲットにされやすく、2014年も邦画界は漫画の実写映画化がひしめき合っている。これは放っておくわけにはいかない!
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まずは、漫画の実写化というとキャストがイメージに合うかどうかが注目されやすいが、国民的人気キャラに挑むのは夏公開の『ルパン三世』だ。ルパン三世を演じるのは小栗旬。ふむ、8キロも減量しているというし、悪くないかもしれないが、声だけは栗田貫一に吹き替えてほしいというのは国民の心の声のハズだ。
そして、ルパンよりも誰よりも気になるのは、銭形警部役がなんと浅野忠信ってことだ。香川照之や筧利夫がキャスティング候補に上がったという説もあり、そちらで見てみたかったと思ってしまう。実は原作では設定が29歳であったりもっとニヒルなキャラクターの銭形警部とはいえ、もやはアニメでの“とっつぁん”としての銭形警部がインプットされているのだからして、浅野忠信とはどうも遠いイメージ。彼がどんな銭形のとっつぁんを見せてくれるか見ものだ。スレンダーボディで不安の声も挙がっている黒木メイサの峰不二子も、吉と出るか凶と出るか……。
キャストで早くから注目されているのは、『あまちゃん』の能年玲奈の出演次回作と決定した『ホットロード』(夏公開)だろう。能年玲奈がヤンキー役に!?と意外に思われがちだが、傷つきやすい孤独なヒロインを描いた少女漫画だからして純粋イメージでいけばハマるはず。原作者の紡木たくもラブコールを送ったとか。しかも、監督は『僕等がいた』『陽だまりの彼女』の三木孝浩とくれば、ピュアさの押し売り間違いないと見た。まぁ、元ネタのイメージ通りということでは映画化成功かもしれないが。
話題作ということでは続編も多数見受けられる。原作からして、発想はいいけど引っ張るのは辛い出オチ的作品なのに、強引にヒットさせたからには当然第2弾も──という『テルマエ・ロマエII』(4月26日公開)。そこそこヒットしたからマイナーチェンジしてやる『闇金ウシジマくん2』(5月公開)。大ヒットしたものの、1作目でファンの逆鱗に触れたにも関わらず今度はファン人気高い京都編に手を出して怒りの炎に油を注いでしまいそうな『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』(共に夏公開)と続く。漫画映画化のメリットだけでなく、ヒット作の続編は手堅いというさらなる大人の事情もプラスされていることは明白で、おそらくはコケずにすむだろう。
と、ここまでは前置きで、個人的にもっとも気になるのは何と言っても12月にパート1、2015年にパート2が公開予定の『寄生獣』だ。私の目が黒いうちはと思っていたが、ついにこの時がやってきてしまったか。ハリウッドでしこたま製作費をかけてR18+指定のバイオレンス描写バリバリでクローネンバーグ御大が監督をつとめるのでない限り許さないと言っただろう! 誰が!?って私が。ハリウッドで清水崇監督が実写化するというからシブシブ待っていたのに。
元ネタとなる岩明均の原作漫画「寄生獣」は「月刊アフタヌーン」で1990〜1995年に連載され、いまだに人気が高い傑作中の傑作だ。右手に寄生した謎のパラサイト“ミギー”と共生する平凡な高校生・新一が、人類を捕食するパラサイトと戦いを繰り広げながら辿る数奇な運命を描いている。ざっくり分けるとSFホラーアクションにジャンル分けされてしまいそうだが、そんな単純なものではなく、主人公の成長はもちろん、家族愛や恋愛といった人間ドラマ、人間とは? 生きるとは? 人生とは?という哲学、加えて戦闘の迫力と理論、また人類側にもパラサイト側にもつかない利己的本能を持つミギーの存在そのもの、などなど語り出すとキリがないほどそれぞれが深く厚みのある物語なのだ。そんな作品の監督に抜擢されたのは『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴。うーん、ほっこりとしつつ人間観察鋭い西岸良平の原作を“CG映画”にした山崎監督かぁ、不安を通り越して早くも残念感しか持てない。新一役が『ヒミズ』の染谷将太というのはなかなかいいキャスティングだが、彼よりもミギーがどうなるのか。お世辞にも上手いとは言えないが、だからこそ味わいがあって誠実さと人柄がにじみ出た岩明均の絵柄があってこそのミギーなのに、CGで変に生々しくなってしまうのか!? ああ、どうかチャーミングなミギーに出会えますようにっ!
山崎監督といえば、2014年夏公開予定のドラえもんの初3DCG映画『STAND BY ME ドラえもん』を『friends もののけ島のナキ』で組んだ八木竜一と共に監督を手がけることも注目されている。この予告編には衝撃を受けた。立体的でツルン、コロンとしたドラえもんは逆に軽く見えて貯金箱っぽく、どこか今どきなのび太の髪は動くたびにサラッサラ、必要以上にジャイアンは大迫力で迫り、内容が全然頭に入ってこない! キャッチコピーは“あたりまえだと思っていたことが、こんなにも大切だったなんて”。その言葉、そっくり返すよ、ドラえもん! キミが2Dであることがこんなにも大切だったなんて。シリーズ中でも名作の「未来の国からはるばると」、「さようなら、ドラえもん」「のび太の結婚前夜」をベースにした感動作だから、見始めは違和感あっても見ているうちに物語に没頭できるといいのだが。
監督として「なるほど、妥当な登板」、と納得したのは『TOKYO TRIBE』を園子温が監督することだ。井上三太のカルト人気高い「TOKYO TRIBE2」の映画化だが、過激な暴力描写ながらも殺伐とし過ぎずにドライなテイストと見応えある人物像に救われる原作を、園子温なら扱い切れるかもしれない。不安要素はファッションブランドも展開する井上三太のオシャレ感と、舞台となる東京ではない架空の街“トーキョー”の再現にどこまでこだわりを持ってくれるかだろうか。
そうそう、監督で思い出したが、『進撃の巨人』が中島哲也監督降板などによる休止状態から、樋口真嗣監督で再始動した。『告白』の中島監督なら残酷で悲劇的な主人公たちのドラマは任せられるような気はするが、巨人の描写そのものと原作で重きを置かれた戦術の演出に不安があった。特撮監督も手がけてきた『ローレライ』の樋口監督ならそのあたりは安定感があるだろう。ドラマ部分では脚本に映画評論家の町山智浩が参加するというのが興味深い。2015年の公開が待ち遠しいところだ。
さて、2014年の漫画実写化映画群は果たしてどうなるか。公開が先のものも気になるが、私としては手始めに3月7日と公開が決まった『銀の匙 Silver Spoon』に照準を合わせよう。こちらはキャストを見る限りでは不安が渦巻く。冴えない平凡な元ガリ勉の主人公を、ジャニーズの“男のセクシーさ”をイメージしたSexy Zoneの中島健人が演じるとは! メガネをかければいいってもんじゃないゾ。それに、とぼけた校長先生役は上島竜兵、恋愛相手の怖い父親役には竹内力、仏のような風貌の先生役には中村獅童などなど、漫画か!と逆に理不尽なツッコミを入れたくなる配役だ。『準喫茶磯辺』の吉田恵輔監督がどう料理するのか、手腕が問われるところ。「意外と良かった」となることを祈るばかりだ。(文:入江奈々/ライター)
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