『ラストミッション』
最近では『マン・オブ・スティール』のお父さん役など、脇に回ることも増えてきたケヴィン・コスナーがCIAエージェントを演じる『ラストミッション』。リュック・ベッソンの原案・共同脚本に『チャーリーズ・エンジェル』のマックGが監督を務めるアクション作だ。不治の病で余命わずかと宣告された主人公が、パリに暮らす十代の娘と残された時間を過ごそうとするが、そこに最後のミッションが舞い込む。
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映画は主人公イーサンが東欧で作戦実行中の場面から始まる。銃撃戦と息のつまるような攻防の合間に10代の愛娘・ゾーイと電話し、わがままな要求に振り回される。ん? なんか見たことある展開だ。今度は病で余命宣告されるが、娘にはもちろん、彼女をパリで育てる元妻にもそのことは言えない。それでも、これまでの空白を埋めるべく、残りの時間は家族として過ごしたいと願う。そんな彼の前に延命可能な治療薬を手みやげにエージェントが現れ、テロリスト暗殺のミッションを持ちかけられる。ああ、この展開も見た覚えがある。
余命わずかの男が延命治療と引き換えに困難な任務に就き、10代の愛娘との関係修復に努力する姿を同時進行で描く。昨年、日本でも放送されたベッソン製作総指揮のフランスの連続ドラマ「NO LIMIT」と大筋がまったく同じなのだ。舞台がパリで、外国人の主人公が危機に巻き込まれる娘を救おうとするというあたりは、ベッソンが製作・脚本をつとめリアム・ニーソンが主演した『96時間』っぽくもあり、ベッソンのあまりに堂々たるネタの使い回しにびっくり。だが、監督と主演が違えば見せ方もまた異なる。“思春期の娘にウザがられながらも、その娘のために戦うお父さん“という1つの主題で変奏曲を作るようなもので、その意味では興味深い試みだ。
ケヴィン・コスナーはだいぶ老け込んだが、80年代の最盛期のピカピカな姿からの“なり果てた感”が逆にいい味になっていて、ほだされる。娘役のヘイリー・スタインフェルドや超ビッチな女エージェントを演じるアンバー・ハードといった若くて強気な女たちとの対比が面白い。
ベッソン脚本はいつも通りの大雑把さで、細かくツッコミを入れたら収拾のつかないユルさ。ベタベタな寒いギャグもちょいちょい入れてくる。それをオスカー監督(『ダンス・ウィズ・ウルブス』)であり同賞主演男優賞候補の経験もあるコスナーや、『トゥルー・グリット』で同賞助演女優賞候補になったスタインフェルドがきっちり演じると、それはそれで愛すべき瞬間になっているのも見どころ。新旧のパリの名所が登場するのも楽しい。マックGの派手な演出も相まって、何も考えずに楽しめる2時間を提供するエンターテインメントだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『ラストミッション』は6月21日より新宿バルト9ほかにて全国公開される。
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