知る人ぞ知る存在だった二階堂和美を起用した
高畑勲監督の功績と先見性
目下の最新作『かぐや姫の物語』では、劇中歌の「わらべ唄」「天女の歌」も自ら作曲。他はすべて久石譲によるものだが、なんと高畑&久石のタッグは意外にも今回が初。「天人の音楽」などで聴かれる、西洋的なアンサンブルと日本的な旋律が融合した無国籍なサウンドは、単なる“昔話”を超えたこの作品の世界観を一層引き立てている。
この『かぐや姫の物語』、主題歌に二階堂和美が起用されたこともけっこう話題になった。高畑監督はクラシックだけでなく、最近の日本のシンガー・ソングライターもマメにチェックしているようで、彼女が昨年発表した『にじみ』というアルバムを気に入り、本人へ直接主題歌を依頼したという。15年ほどのキャリアを持ち、耳の肥えた音楽ファンから熱心に支持される存在ではあるものの、全国的にはまだ“知る人ぞ知るシンガー・ソングライター”だった二階堂和美を本作で抜擢し、「いのちの記憶」という名曲を書かせた功績はとても大きい。あまりにも救いがなく、ある意味で残酷なこの物語にあって、ラストでもしこの曲が流れなかったら、後味はずっとネガティブなものになったに違いない。
ちなみに二階堂和美は『かぐや姫の物語』公開のタイミングで『ジブリと私とかぐや姫』というジブリ/高畑作品関連のカヴァー曲集を出しているが、ここで歌われる「ケ・セラ・セラ」(『山田くん』挿入歌)や「はにゅうの宿(Home,Sweet Home)」(『火垂るの墓』挿入歌)は感動的。ここ数年で出されたジブリ関連の音源では一番聴き応えのある作品集になっているので、未聴の方はぜひ。宮崎&久石のボックスセットほど大がかりなものでなくてもいいから、高畑作品の音楽を総括できるようなブツが出るといいのですが……。(文:伊藤隆剛/ライター)
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