ミスキャストがなく、それぞれが奮闘
実写化と聞いたときは、無謀なチャレンジだと思い、さして期待もしなかった『ルパン三世』。原作は言わずと知れたモンキー・パンチによる1967年に連載スタートしたコミックであり、1971年からテレビアニメシリーズが放送開始され、いまだに国民的な人気を誇るキャラクターだ。
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イメージはすでに国民みんなにしっかり根付いており、目黒祐樹主演で実写化された『ルパン三世 念力珍作戦』の公開ももはや40年前とあって風化しつつある今、このタイミングでの実写化は意外性があり、今さら確立されたキャラクターの実写化に挑むとは愚かなことに思われた。
しかしながら様々な噂が飛び交った後に決定した出演者たちは、もちろん多大なプレッシャーも感じたようだが、十分な健闘を見せてくれた。8キロ減量してあの“ルパンの足首”を作り上げているルパン三世役の小栗旬は、女好きでコミカルで軽いノリでありつついざというときに頼りになる、イメージ通りのルパン三世を体現。本編上映前から「NO MORE 映画泥棒」のコラボCMにも登場し、ルパン三世の元のイメージに飲まれもせずに堂々としているところがまたルパンっぽくてカッコイイ。本編中のジャケットは赤がメインだが、緑バージョンもあり、テレビアニメのファーストシリーズもカバーしているのは嬉しい。
ルパン三世の相棒であるガンマンの次元大介を演じる玉山鉄二はギョロ目が気になるが、モミアゲと顎ヒゲは合格。無骨で寡黙な次元になりきっている。ハマり役かと思いきや、実際にビジュアルを見たときには「なんだか軟弱な五エ門だな〜」とガッカリ感が否めなかった綾野剛演じる石川五エ門も、本編を見てみると元ネタのトボケた味わいも見せてなかなかいい。決め台詞「またつまらぬ物を斬ってしまった」には思わずニヤリとしてしまった。
さて、キャスティング発表時に、「そりゃないだろう!『ルパン三世 念力珍作戦』の伊東四朗がまたやればいいのに」と筆者が不満を漏らした銭形警部役の浅野忠信だが、ガンバリを見せて強引にも納得させられてしまった。いまや銭形警部と言えば、原作のニヒルな彼よりアニメの“とっつぁん”のイメージが浸透しているわけだが、そのアニメのイメージ通りにダサくてまぬけなオッサンを演じきっているのだ。「ルパーーーン!」のダミ声はわざとらしい気がしないでもないが、アニメではお馴染みの“埼玉県警”のロゴ入り拡声器が異様に似合っているのに免じて許そう。
ざっと、このようにメインキャストはそれぞれに及第点をあげていい活躍を見せている。あ、そうそう、忘れるところだったが、峰不二子役の黒木メイサは期待していなかっただけに、可もなく不可もなく、まぁこんなもんだろう。黒木は黒のライダースーツ姿も披露するが、モンキー・パンチに筆者が取材したときに影響を受けたかもしれないとほのめかしていた『あの胸にもういちど』のマリアンヌ・フェイスフルには程遠く、サマにはならない。『ヤッターマン』ドロンジョ役の深田恭子のような意外なハマり役とはならず、悪女っぽさも肉感も足らないところ。だが、冒頭からキレのあるアクションと経産婦とは思えぬプロポーションを見せて奮闘している。(文:入江奈々/ライター)
『ルパン三世』は8月30日より全国公開される。
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