ものすごい勢いでひび割れていく道路。逃げ惑う人々。そして、まるで土台を失った建物のように、海の中へと沈み行く大都市。映画『2012』は、古代マヤ文明の予言をもとに、2012年に地球が滅亡するまでの3年間を描いたディザスター(災害)映画だ。
メガホンを取ったのは『インデペンデンス・デイ』(96年)や『デイ・アフター・トゥモロー』(04年)などで知られるローランド・エメリッヒ監督。ディザスターやパニック映画の名手が、これまでにないスケールで描いた本作は、この秋冬一番の話題作。
そのエメリッヒ監督とは親友でもあり、『2012』では製作、脚本、音楽を手がけているのがハラルド・クローサーだ。1つひとつの質問に、丁寧に答えてくれるハラルドに、本作の出発点や盟友エメリッヒ監督のこと、そして、日本における洋画の低迷についても語ってもらった。
最初はエメリッヒ監督は乗り気でなかった!?
──最初にエメリッヒ監督に『2012』のアイデアを話したときは、「もう、ディザスター・ムービーは作りたくない」と言われたそうですが、最終的にどうやって口説き落としたのでしょう?
ハラルド・クローサー(以下、HK):ローランドにとって、いいディザスター・ムービーとは、ディザスターがメインでない映画なんですね。この映画は、世界が完全に消滅するという設定で、確かにスケールは大きいのですが、その中で人間が行う様々な決断が描かれています。残されたわずかな時間をどう過ごすかという決断もあれば、ごく少数の人々しか生き残れない中で、誰を生かすかという決断を下す人もいる。そうしたドラマがあったからこそ、ローランドを説得できたのだと思います。
──最初から口説ける自信はあった?
HK:いいえ、まったくありませんでした(笑)。当時は『紀元前1万年』という映画の製作中で、監督と一緒にご飯を食べに行ったりすることが多かったんです。そのたびに話をしていたんですが、ある日ローランドが「やろう」と言ってくれたんです。そして、「やるからには、1番大きなスケールにしよう」とね。
──もともと、エメリッヒ監督とは、どんな風に出会ったのでしょう?
HK:一緒に仕事をするようになる前から、共通の友人を通して知り合いではありました。ただ、そのときすでにローランドはメジャーな映画監督で、私は小さな映画の作曲家に過ぎませんでした。その後、『13F』(99年)という映画を彼が製作したのですが、その作曲家を選ぶために、4〜5人の作曲家がテープを渡したんです。その中からローランドが選んでくれたのが、僕のテープでした。僕のテープがあることは、彼も知っていたのですが、どれかは知らない状態で、それでも選んでくれた。そこから一緒に仕事をするようになって、今も友だち関係が続いている。こうした関係は、中々ないのではと思っています。
互いにリスペクトしあえることが大切
──脚本も監督と共同で書かれていますが、ケンカをしたりはしないのでしょうか? また、役割分担などがあれば、教えてください。
HK:長年連れ添った夫婦のようなもので、ケンカはしませんね(笑)。お互いに相手を知り尽くしているので、あまり言葉を交わす必要がないんです。顔を見ただけで、相手が何を思っているのがわかる。それと役割分担ですが、ローランドはビジュアル的視点がメインで、私は音楽がメインになります。それらを平行させながら、作業をしていく。でも、一番重要なのは、お互いにリスペクトしあえることです。
──もともと、作曲家だったことが、脚本を書くにあたって、プラスに働くことはありますか?
HK:自分にとっては音楽も物語も同じなんです。共にエモーショナルな面がありますし、どんどん前に進んでいくリズムや、クライマックスでの盛り上がり、時には観客を笑わせたり、泣かせたりするという意味では、とても似ていると思います。
──日本では今、ハリウッド映画も含む洋画が低迷していると言われています。一方でハリウッド映画は、アメリカはもとより、中国や韓国でもヒットしているようです。ハリウッドのプロデューサーから見て、日本だけハリウッド映画がヒットしなくなった理由はどこにあると思いますか?
HK:日本でハリウッド映画が売れなくなってきているのは理解できます。同じような内容の作品を、同じ人に見せ続けると、興味がそれだけ薄くなっていくのでしょう。一方、日本映画は、年々、質が高くなっているのだと思います。ハリウッド映画の質が低下し、日本映画の質は上がる、そういうシンプルな構造なのではないでしょうか。
大事なのは、いい作品であれば、世界中で泣いたり、笑ったりしてもらえること。そして、映画を見終わった後も、みんなでご飯を食べながら語り合える。どこの国で作られたかは、まったく関係ないのです。そういう映画を、これからも作っていきたいと思っています。
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