10月公開作の1位は『蜩ノ記』。ある罪で10年後の切腹を命じられ、自宅で藩史の編纂を進める武士(役所広司)。彼と監視役となった武士(岡田准一)との師弟愛や夫婦愛、家族愛を描く。岡田准一や役所広司、堀北真希が数多くの情報番組やバラエティ番組に出演してPR。10月4日に公開されて舞台挨拶を行った他、16日には再び大ヒット舞台挨拶を実施。出演者3人の他、小泉監督も登場した。
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岡田はNHK大河ドラマ『軍師・官兵衛』の放送の真っ最中。『官兵衛』の話題性も注目度アップにつながっているようだ。実は映画は昨年4月から6月にかけて撮影され、9月には完成していた。岡田は12月に『永遠の0』の公開を控えていたこともあり、1年間公開を先延ばしにしたとみられる。これが奏功したようだ。
2位は『ふしぎな岬の物語』。吉永小百合が初めて企画から携わった主演作で、千葉県の岬にある喫茶店を経営する女主人と、そこに集う人々の悲喜こもごもを描く。吉永は宣伝に積極的に協力した。8月21日〜9月1日に開催されたカナダのモントリオール世界映画祭のコンペティション部門に出品された際、吉永は共演の阿部寛と共に映画祭に参加し、グランプリに次ぐ「審査員特別グランプリ」と、人間の内面を豊かに描いた作品に与えられる「エキュメニカル審査員賞」をW受賞。数多くのメディアに取り上げられたことで、映画の注目度が高まった。また吉永は福岡や映画のロケ地となった千葉で舞台挨拶付特別試写会に参加した他、公開初日に東京で舞台挨拶をし、翌日は名古屋と大阪、1週間後に新潟で舞台挨拶を行った。大女優らしからぬ宣伝活動ぶりで、動員アップに大いに貢献した。
3位『近キョリ恋愛』は人気コミックの実写映画化。美形ツンデレ教師(山下智久)とクールな天才女子高生(小松菜奈)の恋を描いたラブストーリーで、『君に届け』の熊澤尚人が監督した。主演の山下は宣伝にフル稼働。9月6日に東京ガールズコレクションに出演したのを皮切りに、大阪、名古屋、福岡の先行上映会で舞台挨拶。10月11日の公開初日にはお台場メディアージュ、MOVIXさいたま、新宿バルト9で2回ずつ計6回、翌12日にはMOVIX亀有、TOHOシネマズ川崎、京成ローザ(千葉)で2回ずつ計6回の舞台挨拶をこなした。お台場メディアージュでの舞台挨拶は全国76劇場に中継された。また製作元の日本テレビを中心に、数多くのバラエティ番組や情報番組に出演したことで注目度が高まったようだ。22日に行われた大ヒット舞台挨拶に参加した山下は、器物損壊の疑いで書類送検されたことを謝罪。観客動員数を見る限りでは、このトラブルは興行に影響はなかったようだ。
なお、9月13日から公開中の『るろうに剣心/伝説の最期編』は興収41億円を突破。『京都大火編』52億円と合わせて93億円を記録している。2部作の連続上映は12年『僕等がいた』計42.4億円、13年『劇場版SPEC〜結〜』計48.1億円とあるが、これらを大幅に上回る大ヒットとなっている。(文:相良智弘/フリーライター)
[10月公開作ランキング]
1位『蜩ノ記』8.5億円
2位『ふしぎな岬の物語』7.7億円
3位『近キョリ恋愛』7億円
(10月26日時点。ムビコレ調べ)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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