2月22日(日本時間23日)に迫ったアカデミー賞授賞式。既に発表されている批評家や映画関係者が選ぶ映画賞を見ると、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』と『6才のボクが、大人になるまで。』の一騎打ちとなっている。
・【興行トレンド】配給会社から占うアカデミー賞/イーストウッド監督作が台風の目に! 賞取り屋の戦略とは?
『バードマン』は全米製作者組合賞、全米俳優組合賞のキャスト賞(作品賞に該当)、全米監督組合賞を受賞。一方『6才のボク〜』はゴールデングローブ賞のドラマ部門の作品賞と監督賞、英国アカデミー賞で作品賞と監督賞を受賞している。
だが、興行成績から占うと違った作品が有力候補に浮上する。まずは、過去10年間の作品賞とその興行収入を見てみよう。
『ミリオンダラー・ベイビー』(2005年)1億ドル
『クラッシュ』(2006年)5500万ドル
『ディパーテッド』(2007年)1億3200万ドル
『ノーカントリー』(2008年)7400万ドル
『スラムドッグ$ミリオネア』(2009年)1億4100万ドル
『ハートロッカー』(2010年)1700万ドル
『英国王のスピーチ』(2011年)1億3500万ドル
『アーティスト』(2012年)4500万ドル
『アルゴ』(2013年)1億3600万ドル
『それでも夜は明ける』(2014年)5700万ドル
1億ドル超えは5作、5000万〜1億ドルは3作。作品賞は、ある程度観客を集めているものが受賞している。アカデミー会員も観客の1人であり、観客と同じように関心を持ち共感ができる作品を選ぶ傾向があるといえそう。
それを踏まえて今年の作品賞候補作の興収(2月15日時点)を見てみると──。
『アメリカン・スナイパー』3億400万ドル
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』8000万ドル
『グランド・ブダペスト・ホテル』5900万ドル
『セルマ(原題)』4800万ドル
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』3600万ドル
『博士と彼女のセオリー』3300万ドル
『6才のボクが、大人になるまで。』2500万ドル
『セッション』1000万ドル
1億ドル超えは『アメリカン・スナイパー』のみ、5000万〜1億ドルは『イミテーション・ゲーム』『グランド・ブダペスト・ホテル』の2作。特に「ノミネート後に興収を大幅に伸ばした」作品は、評判が口コミで急速に広がった表れで、アカデミー会員の支持も広がり、“勢いがついて”作品賞に選ばれる可能性は十分。ノミネート後に上映館数を一気に増やして大ヒットしている『アメリカン・スナイパー』は、興収面から見れば最有力だ。
もし受賞すれば、クリント・イーストウッド監督作としては『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』に続く3度目の受賞。ただし、イーストウッドは監督賞にはノミネートされていない。アカデミー史上、監督賞候補にならず作品賞を受賞したのは4度だけだ。
ちなみに、『バードマン』か『6才のボク〜』が受賞すれば、「作品賞で『ハートロッカー』に次ぐ史上2番目に低い興行収入」となる。
(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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