邦画と洋画の攻防を3回に分けて解説する2回目は「1990年代」。
1990年代、映画界は冬の時代を迎える。年間観客動員数は90年に1億4600万人で始まり、以降年々減少して最低が96年の1億1957万人。その後はやや回復して99年には1億4476万人にまで持ち直す。
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洋画と邦画の年間配給収入シェアでは、洋画の方が邦画より高い「洋画人気」の時代を迎える。92年が一番競って洋画が54.9%。最も差が開いたのが98年で洋画が69.8%を占めた。
90年代の洋画人気を支えたのが、粒ぞろいのハリウッドスターたちだ。まず80年代に続きシルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、トム・クルーズが活躍。スタローンは『クリフハンガー』(94年)、シュワルツェネッガーは『ターミネーター2』(91年)、クルーズは『ミッション:インポッシブル』(96年)が洋画年間1位を記録した。
ブルース・ウィリスとケビン・コスナーも人気者に加わり、ウィリスは『ダイ・ハード2&3』(90、95年)や『アルマゲドン』(98年)、『シックス・センス』(99年)、コスナーは『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(91年)や『ボディガード』(93年)がヒットした。
「ブラピ」「レオ様」の愛称で女性のハートをつかんだブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオが一大ブームを巻き起こしたのも90年代だ。ブラッド・ピットは91年『テルマ&ルイーズ』、92年『リバー・ランズ・スルー・イット』で脚光を浴び、96年『セブン』の大ヒットで人気を確立した。
レオナルド・ディカプリオは93年『ギルバート・グレイプ』でアカデミー助演男優賞にノミネートされ、脚光を浴びる。その後、95年『バスケットボール・ダイアリーズ』、96年『ロミオ&ジュリエット』など、大ヒットとはいたらないものの女性ファンの支持を増やす。そして97年『タイタニック』の記録的なヒットでディカプリオ人気はヒートアップした。
一方、スピルバーグ人気も続いた。90年にプロデュース作の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』パート2と3が洋画年間1位と2位を独占したのを皮切りに、93年『ジュラシック・パーク』(監督作)や94年『シンドラーのリスト』(監督作)、98年『ディープインパクト』(プロデュース作)、『プライベート・ライアン』(監督作)など大ヒット作を連発した。
洋画人気は、特殊効果(VFX)技術の進歩で生み出した斬新な映像も貢献し、91年『ターミネーター2』、93年『ジュラシック・パーク』、97年『インデペンデンス・デイ』、99年『マトリックス』などが大ヒットした。
この他、92年『美女と野獣』、93年『アラジン』の大ヒットでディズニーアニメの人気が定着、世界初の長編フルCGアニメ『トイ・ストーリー』が96年に公開され大ヒットし、ピクサーも人気ブランドとして注目を集め始める。
90年代は邦画が全般的に不振だったが、元気だったのがスタジオジブリだ。89年に『魔女の宅急便』が邦画年間1位を記録し、90年代に入ると人気が定着する。91年『おもひでぽろぽろ』、92年『紅の豚』、94年『平成狸合戦ぽんぽこ』、95年『耳をすませば』と、公開する作品全てが邦画の年間1位を記録。そして97年『もののけ姫』が配収113億円をあげ、『E.T.』を抜いて歴代新記録を樹立する。
また98年にエポックメイキングな作品が生まれている。Jホラーブームの立役者となった『リング』と、テレビドラマの映画化ブームの先駆けとなった『踊る大捜査線』だ。
『らせん』との2本立てで上映された『リング』は、当時普及し始めた携帯電話で女子中高生を中心に口コミで広がり、配収10億円の大ヒット。以降数年にわたりJホラーが次々と作られた。
『踊る大捜査線』以前もテレビドラマの映画化は存在したが、『踊る』のヒットはケタ違い。配収50億円をあげ、邦画の歴代1位『南極物語』59億円に迫る大ヒットとなった。97年3月のドラマ終了後に3度のスペシャルドラマを経て、98年10月に公開。映画の公開前にSPドラマを放映して映画を盛り上げる手法の先駆けともなった。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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