先週から公開されている『ディアボリカル』は、『バイオハザード』シリーズなどで知られるアリ・ラーターが主演のSFホラー作品。彼女以外はキャストもスタッフも無名とアナウンスされていたが、公開直前になってアリステア・ルグラン監督の出自が明かされ、多くの映画ファンの関心を集めることになった。
勘のいい人なら“ルグラン”という姓から察しがつくかもしれないが、彼は映画音楽界の大家、ミシェル・ルグランの甥(実父がミシェルの弟)にあたる。当コラムでも7月にミシェルが音楽を手がけた最新作『チャップリンからの贈りもの』を紹介したばかりだが、83歳になった今も『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』といった過去の代表作と何ら変わらない熱量で仕事と向き合う姿勢には、ただただ驚かされるばかりだ。
また、本作ではエンディング・テーマにビーチ・ハウスというバンドの楽曲が使用されているのだが、このバンドのヴォーカルとオルガンを担当しているのは、アリステア監督の実姉であるヴィクトリア・ルグラン。使用された「Myth」という楽曲は、2012年のヒット・アルバム『Bloom』の冒頭に収録されたバンドの代表曲で、そのスペイシーかつ幻想的なサウンドは、このバンドの音楽性を端的に表している。
そんな伯父と姉を持つサラブレッドなので、世間の目が普通の新人監督のデビュー作を見るよりもシビアになるのは当然と言えば当然だが、本作の場合はとりわけ厳しい意見が多くSNS上を飛び交っている。確かに、ホラー映画として見ると演出がオールドファッションに思えるシーンがあるし、SFとして見ると辻褄合わせが行き届いていない部分も見受けられる。もともとミュージック・ヴィデオ畑の出身ということで映像の美しさに期待すると、チープなVFXや特殊メイクにゲンナリしてしまう瞬間もあったりする。
そういうわけで、うるさ型の映画ファンは早々に「やっぱり2世はダメだ」というレッテルをアリステア監督に貼るかもしれない(正確には2世ではないけれど)。ただ、ホラーとSFを混ぜ合わせたアイディアそのものは新鮮だし、緊張感を煽る音響効果、ブルーを基調とした映像のトーンなどにはハッとさせられる部分もあり、個人的には一見の価値のある作品、次作に期待したい監督だと感じている。(後編に続く…)(文:伊藤隆剛/ライター)
・【映画を聴く】(後編)映画界の“世襲”はアリかナシか?ミシェル・ルグラン甥の監督デビュー作『ディアボリカル』
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