『おくりびと』の最強ライバルだった反戦映画監督が来日、無念を語った!
今年のアカデミー賞では『おくりびと』が外国語映画賞を受賞し、日本中が喜びに沸き立った。だがその直前まで最有力候補とされていたのは、イスラエル映画『戦場でワルツを』(11月28日より公開)。イスラエル軍兵士として1982年のレバノン戦争に従軍したアリ・フォルマン監督自身の体験をもとにした作品で、戦争の残虐性、狂気をえぐり出す。そのフォルマン監督が公開を前に来日。11月19日に外国人記者クラブで記者会見を行った。
アニメーションという手法を用いたドキュメンタリーという、これまでにないタイプの本作。4年に渡る製作過程は極めてハードだったというが、アニメにしたことについて監督は、「良心、恐怖、失われた青春、そして戦争など様々な要素をまとめ、戦争という世の中で最もシュールな体験を描くのに、アニメこそが完璧な手法だと考えたから」と説明した。
重いテーマの作品にもかかわらず、世界中で好成績を収めている。監督によると、全世界的に公開されており、現時点で世界興収1400万ドル。フランスで70万人動員したのをはじめ、イタリア、ドイツ、イギリスの成績も良かったという。「アメリカでも良い評価を得ていたのですが、日本の『おくりびと』にオスカーを獲られてしまいちょっと苦戦しました」と苦笑いする監督。だが、そのアメリカでの結果もまずまずだったという。さらにはベイルートのターミナルにあるデューティーフリーでも売られているそうで、「ライセンスのない中でどういう風に売られているかは疑問ではありますが(笑)、どんな形であれ、(世の中には)違う考え方を持つ人がいるんだということを理解するための橋渡しができるのであれば嬉しい」とも語っていた。
自作について、政治的な映画ではないが反戦映画ではあると主張する監督。自らを楽観的な人間だという彼は、「相手の側に立てば、戦争の99%を防げると思う」と話す一方で、ここ1〜2年の状況を見ていると、「その信念がねじ曲げられるような思いを抱くことがある」ともコメント。「世界を変えるためには、映画だけでは不十分」と言いながらも、「反戦を訴えられる場があれば、どんどん発言していきたい」と意気込みを述べていた。
最後に、大穴だったライバル『おくりびと』の感想を聞くと監督は、「アカデミー賞で『おくりびと』が選ばれたとき、みんなは驚いていたけれど、私は驚きませんでした」と“その瞬間”を振り返った。なんでも、授賞式以前に作品を見ていて、「見た後、パートナーに、アカデミー賞では日本の作品が手強いライバルだというメールを送りました」。だがその後、心なしか寂しそうに、「でも、この作品が(オスカーを)獲ってもよかったとは思っていますが……」とつぶやいていた。
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