『エール!』は、本国フランスで2014年末に公開され、4週連続1位/12週連続トップ10入りを果たした大ヒット映画。オーディション番組「The Voice」で一躍注目されて歌手デビューを飾った18歳の新星、ルアンヌ・エメラが映画初出演にして主演をつとめ、大きな話題となっている。
ルアンヌの演じるポーラは、フランスの田舎町で酪農を営むベリエ一家の長女。彼女以外の家族(父、母、弟)は、みな耳が聞こえない。気になる男の子を追いかけて、何の気なしに高校でコーラスのクラスを履修することにした彼女は、そこで自分も知らなかった歌の才能を開花させる。担任の音楽教師からパリの音楽学校への進学を勧められるポーラだが、その歌声を聴くことができない家族は、彼女の才能を理解することができず……。
そんなストーリーラインだけを見ると“涙の押し売り”みたいな作品を想像する人がいるかもしれないが、家族それぞれのパーソナリティや舞台の設定が緻密で、演出も適度に力が抜けているので、自然と見る者に入り込んできて、爽やかな感動を与えてくれる。“750万人が笑って、泣いて、いっしょに歌った感動作”という触れ込みにも、大いに納得だ。
監督は、エリック・ラルティゴ。ロマン・デュリス&カトリーヌ・ドヌーヴが共演の『ビッグ・ピクチャー 顔のない逃亡者』や、『アーティスト』でアカデミー主演男優賞を受賞したジャン・デュジャルダン主演の『プレイヤー』などの監督として知られる。ポーラの父は、本作でセザール最優秀主演男優賞にノミネートされたフランソワ・ダミアン、母は『デリカテッセン』などで知られるカリン・ヴィアール。担任の音楽教師は『ゲンズブールと女たち』でセルジュ・ゲンズブールを演じて話題となったエリック・エルモスニーノが演じている。(後編へ続く…)(文:伊藤隆剛/ライター)
・【映画を聴く】後編/ルアンヌ・エメラの“奇跡の歌声”が響き渡る感動の音楽映画『エール!』
『エール!』は10月31日より全国公開される。
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