一世を風靡してきたミニシアターの老舗シネマライズが2016年1月に閉館される。11年に恵比寿ガーデンシネマとシネセゾン、13年に銀座テアトルシネマ、14年にシネマスクエアとうきゅうが閉館(恵比寿ガーデンシネマは今年YEBISU GARDEN CINEMAとして復活)。90年代から2000年代初めのミニシアターブームを支えてきた人気館が相次いで閉館してきたが、遂にシネマライズも幕を閉じることになる。シネマライズでロングランヒットした作品には『アメリ』(01年)、『トレインスポッティング』(96年)、『ムトゥ 踊るマハラジャ』(98年)などがあり、まさにミニシアターブームの中心的映画館だった。
ミニシアターで上映される映画はアート系映画が中で、「単館映画」とも呼ばれ、1つのミニシアターでしか上映されなかった。だが、2000年ごろから複数のミニシアターやシネコンで上映されるようになり、観客が分散化。この頃始まった邦画ブームで若者が邦画を好んでみるようになったこともミニシアター離れを加速させた。さらにミニシアターで上映されるアート系映画を好んでみる観客が減少していることもある。
ただし、アート系映画にも時にはスマッシュヒットが生まれる。例えば、昨年12月13日から新宿武蔵野館、渋谷シネパレス、109シネマズ川崎の3館でスタートした『あと1センチの恋』。連日満席や立ち見の状態が続いたことから、全国7都市に拡大公開。4カ月にわたりロングラン上映され、最終的に全国で興収約4億円をあげた。
ミニシアター閉館ラッシュの要因の1つであるシネコンだが、競合が激しい地区では差別化の一環としてアート系映画の上映に力を入れているところもある。それが今年4月にオープンしたTOHOシネマズ新宿だ。
オープンに合わせて上映され、ヒットしたのが『セッション』だ。TOHOシネマズ新宿を中心に16スクリーンで上映。その後、スクリーン数が増えていき、最終的には全国延べ120スクリーン以上で上映され、全国興収は5億円を超えた。特にTOHOシネマズ新宿では興収が1億円を超え、ミニシアターブーム時に匹敵する1館での興行成績を上げている。
一時期のブームほどではないが、アート系映画は再び元気を取り戻しているようだ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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