2015年の年間興行成績をまとめたところ、興行ランキング1位は興収95億円の『ジュラシック・ワールド』。シリーズで初めて3D化され、「テーマパークにいるたような臨場感がある」と観客に好評だった。15年に一気にシネコンに増えた4DXやMX4Dも高稼働した。体感型シアターはアクション映画にうってつけだったようだ。
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2位は『ベイマックス』。実は英語の原題は『BIG HERO 6』で、主人公ヒロにベイマックス、そして兄の友人4人の計6人がヒーローとなって兄の死の真相に挑むタイトルを忠実に表している。一方、日本では感動作が当たりやすいので、ベイマックスをタイトル名にし、「あなたの心とカラダを守ります」というコピーを付けてベイマックスの“癒し系”を前面に打ち出した。この戦略がズバリ的中した。
ディズニー作品は他に5位『シンデレラ』、10位『インサイド・ヘッド』、15位『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』と計4本がトップ20入り。ディズニーはラブストーリーにアクション、そしてアニメーションとラインアップ戦略が安定していて、どの作品もヒットに結びついている。
ディズニーと同じく今年の映画界を引っ張ったのが、東宝東和が配給するユニバーサル映画だ。『ジュラシック・ワールド』を筆頭に、6位『ミニオンズ』、13位『ワイルド・スピード/SKY MISSION』と計3本がトップ20入りしている。
特に『ミニオンズ』は大健闘で、15年最大のサプライズヒットだろう。シリーズは過去2作が作られ、『怪盗グルーの月泥棒』(10年)が12億円、『怪盗グルーのミニオン危機一髪』(13年)が25億円、そして今作で51億円と「倍々ゲーム」で増えている。2作目は従来のファミリー層を押さえつつ、女子中高生を狙ってLINEの公式スタンプとしてミニオンを無料で配布するなどしたことが奏功した。『ミニオンズ』ではさらに女子中高生客の拡大を狙い、ウェブ宣伝に注力して徹底的にミニオンを売り込んだことで50億円超えにつながった。
邦画最大のヒットが『妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』。ブームの真っただ中での公開となり猛ダッシュに成功。初日2日間の興収は16億円と『千と千尋の神隠し』を抜いて邦画史上最高を記録した。
次が『バケモノの子』。細田守監督が、ホップ(『時をかける少女』興収2.6億円)→ステップ(『サマーウォーズ』16.5億円)→ジャンプ(『おおかみこどもの雨と雪』42.2億円)した後の作品で、「ヒット確実」といわれているなか、その期待に応えた。
邦画実写最大のヒットが『HERO』の46億円。だが、前作が81.5億円をあげて07年の日本映画ナンバーワンヒットとなった勢いはない。テレビドラマの映画化はイベントムービーとして大勢の観客を引き付けてきたが、テレビドラマ全体の勢いが弱まり、映画化しても以前ほどヒットしづらくなっているようだ。(文:相良智弘/フリーライター)
[2015年公開作 年間ランキング]
1位『ジュラシック・ワールド』95億円
2位『ベイマックス』92億円
3位『妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』78億円
4位『バケモノの子』59億円
5位『シンデレラ』57億円
6位『ミニオンズ』51億円
6位『ミッション:インポッシブル/ローグネイション』51億円
8位『HERO』47億円
9位『名探偵コナン 業火の向日葵』45億円
10位『インサイド・ヘッド』40億円
11位『映画 ドラえもん のび太の宇宙英雄記』39億円
12位『ドラゴンボールZ 復活の「F」』37億円
13位『ワイルド・スピード SKY MISSION』35億円
14位『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』32億円
15位『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』31億円
16位『暗殺教室』28億円
16位『ビリギャル』28億円
16位『ラブライブ!THE School Idol Movie』26億円
19位『ターミネーター:新起動/ジェニシス』26億円
19位『BORUTO-NARUTO THE MOVIE-』26億円
(ムビコレ調べ)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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