ドラマ、映画で、これまで何度も映像化されてきた筒井康隆のロングセラー小説『時をかける少女』。その最新版となる作品が3月13日から全国公開されるが、それを記念し、過去の名作2本と最新版を一挙に上映する「時かけ映画祭」が、2月27日に新宿ピカデリーで開催された。
この日上映されたのは、最新版のほか、大林宣彦監督、原田知世主演の1983年版と、細田守監督がアニメ映画化した2006年版の3本。上映前にはゲストとして、最新版の谷口正晃監督と主演の仲里依紗、83年版の大林監督、原作者の筒井が登場し、「時かけ」について語り合った。
06年版では主人公の声優を務め、実写映画の最新作にも主演している仲は、「2回連続で主人公を演じるのは、私は嬉しかったけれど、どう思われるかという不安もあった。でも、すごくステキな作品なので一生懸命やりました」と挨拶。2人の大御所を前に緊張気味の谷口監督も、伝説的な小説の映画化だけに強いプレッシャーを感じていたと話していた。
一方、筒井は、「『時をかける少女』は、私にとっては『金を稼ぐ少女』。映画になるたびに本が爆発的に売れ、ありがたい」とニンマリするも、「それでもアニメを含めて映画化されたのが4本で、まだまだ川端康成の『伊豆の踊子』には負ける。あっちは確か6本なので、これには及びません」と、世界的名作へのライバル心をのぞかせた。
また、「27年経ったから、裏話を」と語り出した大林監督。83年版が作られた背景には、角川春樹の強い思いがあったことを明かした。
「あるオーディションで、(当時10代半ばだった)原田知世にベタ惚れした春樹さんが、『本当は僕のヨメにしたいんですけど、年の差を考えると、いけませんよね?』と言うので、『いけませんな』と(笑)。さらに、『せめて息子のヨメにしたいんですけど、当人の意見もあるし、いけませんよね?』と言われ、『いけませんな』ということで、『それじゃあ、せめて1本だけ、記念に映画を撮ってあげたいので、尾道を舞台に、知世のために撮ってくれませんか?』ということから、製作することになりました」と製作秘話を振り返った。
当時は角川書店の社長だった角川が、「原作はうちの出版物で」と薦めてきたのが、筒井の『時をかける少女』で、「僕は内容を知らなかったのですが、題名が良いと思い、それだけで決めてしまった」と大林監督。
サラサラと流れるような穏やかな口調で、目をつむりながら昔を振り返って語り続ける監督だが、話はいっこうに終わる気配が見えず、進行時間が気になるスタッフはソワソワ。司会者も、どこで話を止めていいものかと困惑した様子の中、ようやく「時間があれですので、最後に一言だけ」と口にした大林監督だったが、それからがまた長く、ハリウッド映画の『ある愛の詩』と『時をかける少女』の共通点などについてとうとうと語った後、映画を撮ってから4、5年後の原田知世の言葉を紹介。彼女は撮影中、ずっと主人公を、「ロボットみたいにポキポキしてヘンな女の子」だと思っていたそうで、「こんな女の子がいるわけがなく、どんな風に(世間に)受け止められるのかとヒヤヒヤしていた」と言われたことを告白。「あれ以来、彼女は、二度と『時をかける少女』に近づかない。そんな苦行の映画でもあった」と明かし、駆けつけたファンは意外な秘話に熱心に耳を傾けていた。
『時をかける少女』は3月13日より新宿ピカデリーほかにて全国公開される。
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