『幸せをつかむ歌』
(…前編より続く)また、劇中ではリッキー&ザ・フラッシュのオリジナル曲「Cold One」も披露される。実際にはこの映画のためにジェリー・ルイスとジョナサン・ライスが書き下ろしたもので、ポリスの「見つめていたい」を思わせるリフが印象的な楽曲だ。設定では15年前にリンダが書いた曲ということになっているのだが、これが名だたる名曲のカヴァーに負けないテンションを持っており、本業がミュージシャンではない人とは思えないほど堂に入ったパフォーマンスだ。
リッキー&ザ・フラッシュのメンバーとして、ギタリストのグレッグを演じるリック・スプリングフィールドの存在も忘れられない。すでに還暦を超えている彼は、長年ミュージシャンと役者という二足のわらじを実践してきた人物。最近の日本では福山雅治に近い存在かもしれない。端正なルックスのおけげでアイドル的な扱いをされることが多かったが、近年はミュージシャンとしても新しいファンを獲得しており、3年ぶりに発売されたばかりのアルバム『Rock Science』では相変わらず若々しい声を聴かせてくれる。本作ではリンダの恋人でありよき音楽的パートナーでもある重要な役どころを好演している。
劇中でのリンダら熟年ロッカーに対する世間の偏見に満ちた態度や、メイミー・ガマーの演じるジュリーの心境の変化の描き方には極端かつ唐突な印象があり、ところどころ「ん?」と思う瞬間もあったりする。ただ、過去に音楽ドキュメンタリー作品なども手がけているジョナサン・デミ監督らしく、本作は音楽的にとても力が入っており、70年代後半から80年代のアメリカン・ロックが好きな人ならグッとくる内容であることは間違いない。(文:伊藤隆剛/ライター)
『幸せをつかむ歌』は3月5日より公開。
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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