ベッソンとイーストウッド、異なるアプローチながら手堅い製作力で活躍し続ける2人

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『ジャージー・ボーイズ』撮影中のクリント・イーストウッド
(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT
『ジャージー・ボーイズ』撮影中のクリント・イーストウッド
(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT
『ジャージー・ボーイズ』撮影中のクリント・イーストウッド
(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT
『LUCY/ルーシー』撮影中のリュック・ベッソン
(C) 2014 Universal Pictures

リュック・ベッソンが監督に脚本に精力的に活動している。ここ5年間、毎年監督作と脚本作が公開され、今年は脚本作がケビン・コスナー主演『ラストミッション』(公開済み)、ポール・ウォーカー主演『フルスロットル』(公開中)、監督・脚本作がスカーレット・ヨハンソン主演『LUCY/ルーシー』(公開中)だ。

ベッソンは自分のプロダクション、ヨーロッパ・コープを拠点に製作にあたる。監督・脚本作が多いのは、製作費を安く抑えているから。ハリウッド映画はアクション大作になると1億ドルを超えるのはざらだが、ベッソン作は3000万ドル前後といわれる。人件費の安い米国外で撮影を行って製作費を抑えつつ、アクションシーンは派手に見せる工夫を凝らし、ハリウッドスターを起用し観客の注目度を高めている。

ヨーロッパ・コープはユーロネクスト・パリに株式上場しており、株式市場から集めた資金も映画製作を支えている。監督のプロダクションの上場は、日本では聞いたことがなく、海外でも珍しいケースだ。ヨーコッパ・コープは「映画のプロダクション」というより「総合的な映像製作・販売会社」。2013年度の売り上げでは海外への権利販売が売り上げ全体の38.6%、テレビシリーズが15.3%を占める。テレビシリーズは『トランスポーター』や『ニキータ』など自身の監督・脚本作を基に製作している。今後も『96時間』シリーズや『トランスポーター』シリーズが企画されており、彼の旺盛な製作意欲は今後も続きそうだ。

一方、83歳になった今でも第一線で活躍し「生きる伝説」とよばれているのがクリント・イーストウッドだ。監督作は、新作『ジャージー・ボーイズ』(9月27日公開)で33本目。前作『Jエドガー』(11年)から『ジャージー・ボーイズ』まで3年空いたものの、年末には『アメリカン・スナイパー』の公開が控え、今年は公開作が2本となる(全米公開12月25日、日本公開未定)。大半は1〜2年に1本の割合でコンスタントに監督している。

イーストウッドも自分のプロダクション、マルパソ・プロダクションを拠点に製作にあたる。マルパソは1975年にワーナー・スタジオ内に事務所を構え、以降大半の作品にワーナーが製作費を出し、配給も行っている。

彼の製作の特徴は、ベテランスタッフが多いこと。例えば、『ジャージー〜』の撮影トム・スターンは30年以上、編集のジョエル・コックスは40年近く、衣装のデボラ・ホッパーは30年にわたりイーストウッドとコラボレーションを続けている。美術のジェイムズ・J・ムラカミは美術監督としてイーストウッド作品を手がけたのは『硫黄島からの手紙』(06年)だが、「イーストウッド組」のチームの一員として携わるようになったのは『許されざる者』(92年)からだ。気心の知れたスタッフと作ることでスピーディーな製作が可能になる。多くの監督が10回以上同じシーンを撮るところを彼は1回でOKを出すことが多いといわれる。何をどう撮るか、十分に計画し、不要な撮影はしないのだ。このため低予算で製作でき、ワーナー側もイーストウッド作品の製作にゴーサインを出しやすいようだ。(文:相良智弘/フリーライター)

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