終戦70周年記念作品として、吉本興業グループの新会社「KATSU-do」により、芥川賞作家・高井有一による同名小説『この国の空』が映画化されることとなり、二階堂ふみ、長谷川博己、工藤夕貴らが出演し、日本を代表する脚本家の荒井晴彦が17年ぶりにメガホンをとることが発表された。
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原作の「この国の空」は、1983年に出版され、谷崎潤一郎賞を受賞した作品。終戦間近、当時の東京の庶民の生活が細やかな感性と格調高い文章で丁寧に描かれており、戦争という時代を戦場ではなく、庶民の暮らしを繊細に、そしてリアルに、大胆に描いている。
メガホンをとるのは、1977年の『新宿乱れ街 いくまで待って』で脚本家デビューし、『Wの悲劇』(84年)や『ヴァイブレータ』(03年)、最近では『共喰い』(13年)や『さよなら歌舞伎町』(15年)の脚本も手がける荒井。97年に『身も心も』で脚本・監督をつとめて以来の監督作となる。
その荒井は本作について以下のようにコメントしている。
三十年前、『この国の空』を読んで、映画にしたいと思った。高井有一さんにお会いして、映画にできる当てはありませんが、原作を頂けませんかとお願いした。高井さんは快諾してくれた。
昭和二十年、八月、杉並の善福寺に母(工藤夕貴)と住む若い娘(二階堂ふみ)が隣家の妻子を疎開させた中年男(長谷川)とどうせ本土決戦、一億玉砕死ぬのだと一線を越えてしまう。いけない、と思ったのと同時に里子の周りから蝉の声が消えた。しんと鎮まり返った一瞬があった。里子は身体を弾ませるようにして市毛にしがみついて行った。しかし、戦争は突然終わる。娘は、死ななくてすんだと喜ぶ男を見ながら、戦争が終ったらこの人の奥さんと子供が帰ってくると思う。「この国の空」の主人公は戦争が終って喜べないのだった。この娘にとって「戦後」が「戦争」になるのだろうと予感させて小説は終る。
この国の戦後は、戦争が終ってよかっただけでスタートしてしまったのではないだろうか。まるで空から降ってくる焼夷弾を台風のような自然災害のように思って、誰が戦争を始めたのか、そして誰がそれを支持したのかという戦争責任を問わずに来てしまったのではないだろうか。戦争が終ってバンザイじゃない娘を描くことで、この国の戦後を問えるのではないかと思った。
企画は動かなかった。六年前、余りに仕事がないので「この国の空」をシナリオにした。信頼する監督に読んでもらった。脚本賞とれるようなホンだけど、こういう映画、誰が見るの?と言われた。去年の暮、あるプロデューサーがやりましょうと言ってくれた。監督、誰にしようと言ったら、自分で撮りなさいよと言われた。そして、いま、「戦争が終って僕らは生まれた」と同じ歳のカメラマンと「戦争を知らない子供たち」を口ずさみながら撮影している。
敗戦から七十回目の八月十五日の公開を目指して──。
『この国の空』は2015年、全国公開予定だ。
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