(…前編より続く)ではデジタルリマスターは、どのような工程で行われるのであろうか。過去に記録保存したHDアナログテープ(ベータカム等)を使用する場合も多いが、『サウンド〜』のような名作や大作、話題作やヒット作となると最高品質が求められるため、前回、前々回でお話しした「4Kスキャニング」が高画質デジタルリマスターのキーワードとなってくる。
・【超簡単! いまさら人に聞けない映像用語辞典 9】デジタルリマスターの正しい意味、知ってましたか? 映像と音を蘇らせる作業を解説!(前編)
4Kスキャンを経たデジタルリマスターの基本的な流れは、工程図を参照されたい。まず初めに「(1) 素材を選ぶ」ことから始まる。ネガが保管されていれば、リマスティングにもっとも有利となる。しかしポジ、またはプリントしか存在しない場合があるため、最良の素材を厳選して決定するのである。
続いて素材の「(2) 状態を調べる」。経年変化等で選定された素材が傷んでいる場合も多く、洗浄(カビや塵などの付着物がある)、補修(ヒビ割れや破損がある)作業を経て「(3) 4Kスキャン」(前回、前々回参照)を行う。
この時点でアーカイブとして「(4) 4Kスキャンデータを保存」。同時に作業容量の負荷を低減するため、4Kから「(5) 2Kダウンコンバート」して、「(6) デジタルレストア」、「(7) グレーディング」という手順でマスターを仕上げていくのである。
ちなみに『サウンド・オブ・ミュージック』では、65mmネガを8K解像度でスキャン、4K解像度にダウンコンバートして大掛かりな作業が進められている。
では、次回はデジタルリマスター作業の後半、「(6) デジタルレストア」と「(7) グレーディング」のお話をしよう。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は5月1日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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