世界的ネット通販企業のアマゾンが昨年9月から開始した動画の見放題サービス「プライム・ビデオ」。宅配の日時指定やセール購入などの特典が受けられる有料サービス「アマゾンプライム」の付加価値で会費は年額3900円(月額300円強)。既存のサービスに動画サービスを上乗せして相乗効果を狙う戦略だ。HDや4K画質で映画やテレビ番組、独占ライブビデオなどの音楽動画などを配信している。
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また、WOWOWに先行して『ターミネーター:新起動/ジェニシス』『ミニオンズ』『テッド2』を独占配信している。
映画作品は従来、映画公開→ブルーレイ・DVDの発売、作品単体の動画配信→WOWOW、スターチャンネル→他のCS放送チャンネル→定額制動画配信サイト、という順でリリース・放送。定額制動画配信の権利は、どのサイトでも契約が可能な非独占契約が中心だった。ところがアマゾンでは高い権利料を払ってWOWOWやCSチャンネルより先に独占配信する作品を増やしている。
さらにアマゾンでは日本オリジナル作品の強化を打ち出し、1年間に20作を投入する計画。うち12本を発表している(残り8本は近日中に発表予定)。
ディーン・フジオカ主演で人気少女マンガを実写ドラマ化する『はぴまり〜Happy Marriage!?〜』、『クレヨンしんちゃん』の新作連続ドラマ『クレヨンしんちゃん外伝 エイリアン vs. しんのすけ』、ダウンタウンの松本人志が企画し芸人同士がにらめっこをするバラエティ番組『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』、全編4K撮影で日本の文化と魅力を紹介するドキュメンタリー『PRIME JAPAN 日本のこころに出会う』、仮面ライダー生誕45周年記念プロジェクトとして誕生した『仮面ライダーアマゾンズ』など。
アマゾンの日本オリジナルコンテンツはドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー、キッズ向け。ネットフリックスが『アンダーウェア』『火花』、Huluが『ラストコップ』『フジコ』とドラマが中心なのに比べるとジャンルが多岐にわたっている。
一方、アマゾン向けにオリジナルコンテンツを作る側の利点は、製作著作権を持てる点だ。テレビ局が製作するドラマの場合、大半の著作権はテレビ局が持つ。製作会社では著作権を持てないのだ。アマゾン向けなら製作会社は著作権を持つことができ、全ての責任を負う。宣伝プランニング、プロダクトプレイスメント、ドラマを核にどうビジネスにつなげていくか、全てを製作会社が考える。
アマゾンならではの利点としては「作品とショッピングとのリンク」もある。アマゾンのサイト上に番組ごとの「ストア」が設置され、そこでグッズなどを販売できる。アマゾンが日本独自作を強化することで、製作会社の活性化にもつながりそうだ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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