1967年生まれ。監督としてのキャリアはテレビ界でスタート。カルトテレビ映画『La Classe américaine』で、共同で監督・脚本をつとめ、94年には同作品を長編映画化。その2年後には長編映画の脚本を書き始め、コメディ映画『DELPHINE 1,yvan 0』などの脚本を書き始めた。長編デビュー映画は99年の『マイ・フレンズ』。06年にはジャン・デュジャルダン主演のスパイパロディ『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』でブレイクすると、3年後にの09年には『OSS 117: Lost in Rio』で再びデュジャルダンと手を組んだ。本作では初のハリウッド撮影に挑戦し、第84回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞を含む5部門に輝いた。
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モノクロ・サイレントで、おまけにフランス映画という変わり種ながら、本年度アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、衣装デザイン賞、作曲賞の5部門に輝くなど、世界中の人々を魅了している『アーティスト』。
サイレントからトーキーへと移り変わっていく時代を背景に、スターへの階段を駆け上がっていく新人女優のペピーと、人々から忘れ去られていくサイレント映画の大スター・ジョージの恋をロマンティックに綴ったこの映画で、メガホンを取ったミシェル・アザナヴィシウス監督が来日。
製作にあたっての苦労話から、アカデミー賞を受賞した感想、妻であり本作のヒロインでもあるベレニス・ベジョとの関係などについて語ってくれた。
ミシェル・アザナヴィシウス:サイレント映画をモノクロで撮るというアイデアは、以前から温めていたんです。ただ、資金調達をするとなると、まずは自分に自信が持てるようになるまで待たなければならなかった。
そのために必要だったのが『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』と『OSS 117: Lost in Rio』の『OSS』シリーズ2本のヒット。これでようやく自信を持てるようになり、次回作はモノクロでサイレント映画を撮りたいと話すことができるようになりました。
アザナヴィシウス:最初は「何を考えているんだ。ちょっと頭がおかしいんじゃないの?」っていう反応でした(笑)。でも、こうして作品が仕上がったわけですから、資金調達をしてくれた人たちはみんな満足していると思います。
アザナヴィシウス:元々、この映画はカラーで撮っていたんですね。でもそれは、予備を作るという意図ではなく、白黒のニュアンスを見るためにはカラーで撮った方が最良という技術面での判断でした。
ただ、プロデューサーに「カラーバージョンという選択肢も残しておいた方がいいんじゃないか」と助言されたこともあり、最初はそういう気持ちがあったのも事実です。ですが、実際にやってみると、カラーと白黒を同時に考えるのはすごく大変な作業で、加えて、自分自身がカラーに対し乗り気になれなかったので、「これは無理だよ」とプロデューサーに伝え、途中でカラーバージョンを放棄しました。
アザナヴィシウス:それも考えたんです。モノクロの作品を作ってからカラーにしようかなと。ですがそれも、この映画が大失敗した場合、テレビ局には白黒だと売れないのでカラーにすることも検討しなくてはという苦肉の策だったわけです。
アザナヴィシウス:どちらかというとモノクロのまま3Dにする方が、カラーにすることよりも興味がありますね。
アザナヴィシウス:通常の映画だろうとサイレント映画だろうと、目指しているのは共にストーリーをいかにうまく語るかであり、同じなんです。ただ、異なるのは、それをビジュアルだけでどう語るかということ。となると、セリフが使えない分、難しさに目がいきがちですが、逆に解放される面もあり、普通の映画では使わないようなシーンも取り入れることができました。そのためにも、たくさんのサイレント映画を見て、サイレント映画ならではのルールを頭に叩き込みました。
アザナヴィシウス:あのシーンは『第七天国』(1927年)という映画にインスパイアされたものです。ですが、まるっきりそのものではなく、元は主演女優が男性のジャケットを着てみるというシーンで、それが少し頭のなかにあったことと、それ以外の要素を組み合わせたものです。ただ、なぜこのシーンが生まれたのかを論理的に説明するのは難しいですね。
アザナヴィシウス:すごく嬉しいと思ってます。この映画の存在感をより深めることができましたし、私がやった仕事も、より多くの人に知ってもらうことができ、それによって私は、より大きな自由を勝ち取ることができたと思います。
アザナヴィシウス:女優としても素晴らしいと思います。近くで見ていたからわかるのですが、ペピー役を演じるに当たって本当にすごい努力をしていました。単にあの時代の女優を体現するだけでなく、あの時代のアメリカ人女優のジェスチャーの仕方などを会得し、肉体的な努力も積み重ねてペピー役になりきっていたのです。
彼女自身、素晴らしい女優だと思いますが、この映画でペピーという自分にぴったりの役に出会えたことで、今後、ほかの監督が彼女に新しい役を提供しやすくなったと思います。そういう意味でこの役は、彼女にとって、女優としての当たり役になったと思っています。
アザナヴィシウス:ちろんです(笑)。彼女はシナリオの初期段階から、私と同じくらい近いところで、この映画が完成していくのを見ていたので、2人の会話ではこの映画に関することは、とても多かったですね。
ただ、監督と女優という撮影現場での関係性を、私たち2人のプライベートには持ち込まないよう気をつけました。現場では監督である私がリードしますが、プライベートでは、どちらかというと決めるのは彼女なのです(笑)。
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