1996年9月13日生まれ、神奈川県出身。2011年にデビューし、映画では『一週間フレンズ。』(17年)、『世界でいちばん長い写真』(18年)、『ジオラマボーイ・パノラマガール』(20年)などに出演。19年にNetflixドラマ『全裸監督』のヒロイン・佐原恵美/黒木香役を演じて話題を集める。同作で第24回釜山国際映画祭アジアコンテンツアワード最優秀新人賞を受賞。その後はドラマ『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』『恋する母たち』『一億円のさようなら』(3作とも20年)、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(21年)やNetflixドラマ『全裸監督シーズン2』(21年)など多くの作品に出演。21年は映画『Bittersand』、ドラマ『レッドアイズ 監視捜査班』にゲスト出演のほか、『言霊荘』、『つまり好きって言いたいんだけど』にも出演。22年は『妻、小学生になる』に出演。
演じたのは、世間的には道理に反した役柄。でもすごく人間らしいと感じた
ポン・ジュノや山下敦弘の監督作で助監督を務め、自費で製作した監督作『岬の兄妹』(18)で注目された片山慎三監督の商業デビュー作となる『さがす』。大阪を舞台に、ある日忽然と姿を消した父親とその行方を探す中学生の娘、失踪前日の父が「見かけた」と口にした指名手配犯の青年、真相の鍵を握る女性が織りなすドラマに引き込まれる。
謎だらけで始まる物語の点と点をつなぐのは、連続殺人犯で指名手配中の山内とSNSで接触していた「ムクドリ」というハンドルネームの女性だ。生きる意思を失ったとき、人はどうするのか? 答えは1つではないこの問いに対して、森田望智は、“ムクドリはこのように行動した”という姿を真摯に見せる。
2019年にNetflix『全裸監督』のヒロイン役で一躍脚光を浴び、その後も『ジオラマボーイ・パノラマガール』などの映画、連続テレビ小説『おかえりモネ』などテレビドラマでも活躍する彼女に、片山監督の演出について、主演の佐藤二朗、共演の清水尋也との仕事について語ってもらった。
・攻める森田望智vs寄り添う恒松祐里…新旧2大女優の悲哀が切ない『全裸監督』インタビュー
・[動画]連続殺人犯鬼の清水尋也を追う!父・佐藤二朗はなぜ消えたのか?/『さがす』予告編
森田:台本を最初にいただいたとき、ムクドリさんのキャラクターは全然違っていました。どちらかというと、誰もが想像しやすいようなダークな印象だったんですけど、決定稿になる直前にガラッと変わりました。監督とお話しして思ったのは、日常で普通に振舞う人が抱えている、見えない部分の印象を残したいということ。そんな素振りも見せなかった人が何故?という要素と、セリフで説明しなくても伝わってくる空気感。その2つはすごく大切にしました。たぶん監督もそう思っていらっしゃるんじゃないかと思います。
森田:生きるのも死ぬのも、どっちが正しくてどっちが間違っているかなんて、誰にもわからないよね、とムクドリさんは考えていると思います。世間的には道理に反していることですけど、そう捉えていないキャラクターなので、それが生命力のように見えるのかもしれません。そういうところを、すごく人間らしいと感じました。
森田:私も思いました。こういう人もいるだろう、というのは。死が目的になって行動をしてはいるけど、演じてみたら、本当は生きたいんだな、とすごく思えて。2つの感情が表裏一体になっているのを、この役からすごく感じました。世界からいなくなる、と決めるのは、相当強い覚悟がないとできないことです。その強さは、生きたいという思いと同じぐらいの強さでもあり、そこに生命感があるのかもしれません。
森田:そう、眼鏡なんかしちゃって。私も外したかった……嘘(笑)、冗談です。
森田:ムクドリさんって、第一印象ではあまり好意的な感情を持たれないキャラクターだと思うんです。でも、結果的にそう見えていることであり、演じるうえではそれを目指してもいました。ムクドリさんの感情は、自分の道理のもとに動いてると思うんです。理由なく怒る人でもない。描写として、自分が正しいと思う信念からちょっとずれたときに、相手に対して高圧的になる部分だけが切り取られていますが、ちゃんと心を持った人間でいたいと思っている人です。そういう部分を描いた場面もありましたが、カットされたので、見えにくかったりします。だからこそ「そういうところもあるのかな」と感じさせられるようにしたかった。ちゃんと人間なんだよ、という部分はすごく大切にしました。
ただ嫌な役ではなくて、真理を見極める力を持ってるキャラクターだと私は思っています。誰よりも一番最初に現実を受け入れてしまう人、誰よりも早く気づいてしまう人というイメージは、演じながらずっと持っていました。
森田:台本ではあんな感じのシーンではなかったんです。普通のやりとりで、ムクドリさんが智にちょっと寄り添ってる一面があるのかな?くらいのイメージでした。順撮りではなかったので、そのシーンを撮ったのが最後だったんです。智との最初の出会いや最後のシーンを先に撮っていて、感覚の中で繋げたときに、やっぱり智と心を通わせるシーンにしたいというのがあって。
あのシーンはいろいろなパターンをやって、二朗さんとのバランスを考えながら行き着いたあのテイクが採用されました。笑ったり、泣いたり、何パターンか監督が用意してくださって、智の見え方、ムクドリさんの見え方を最終的に考えてくださって。監督が私たちをすごく丁寧に見てくださっていたな、と感じた印象的な撮影でした。
森田:本当に説明が全くなされてないですよね。それでも、言わなくても伝わっているかも、というか。確信めいたものはないし、曖昧な伝え方ですけど、伝わっていたらいいなと思います。
現場では、その場で生まれた感情そのままを撮ってもらっていました。作っていった感情じゃないんですよね、全部のシーンが。無理にあの感情を引き出そうとするわけではなくて、その場でできたもの。だからこそリアルに見えるのかもしれません。この場面に限らず、どのシーンもいろいろなものが組み合わさって偶然できたものという感じがあります。
森田:そうなんです。私もそのシーンが終わるまで着地点がわからない。結果的にどんどんどんどん変化していくので、私自身も正解がないまま現場にいて、終わった後に全く違うものになっていたことが多かったです。本当に予想外な演出をかけてくださるというか、瞬発的なすごさを毎回現場で感じました。
森田:私はむしろその方がありがたいです。一緒に作ってくださるスタッフのみなさんが、脚本で書かれている以上のものを引き出そうとしてくれるのをすごく感じるので。撮り方も、感情の流れをすごく考えてくださっていました。
本当の人間の姿を、脚本からさらに現場で色付けしてくださっているイメージで、どんどん深まっていく。全く違う感情が生まれたりするので、まるでムクドリさんが生きているようでした。
もちろんストーリーはしっかりあるのですが、やっている感覚で言うと、全然作ってなかったな、と思います。ムクドリさんという役でいるだけでいいというか。あとセリフを覚える必要もないし(笑)。
森田:現場でどんどん変わって、セリフが足されることもあれば削られることもあり、覚えて行っても、その通りにはならないんです。しっかり固めていくと逆に大変なことになる。私は結構不器用だから最初は焦りましたが、分かってからは用意し過ぎず、その場で新鮮に反応できるためのものだけ持っていっていました。
本当に今までにない感覚でしたね。台本を読みながら、このシーンがヤマだなと思うと、どうしてもそこを意識するけど、何気ないシーンでフラットに考えていたところが実は役の本質的な部分だったりする。それはやってみないと全然わからなくて。リラックスして、そこにいるだけで大丈夫なんだと思えるような、そんな居心地の良さがありました。
清水尋也さんとの共演は「ここでも一緒なんですか!」って(笑)
森田:面白い人です。お芝居に対してものすごく真摯に向き合っていらっしゃる姿はもちろん、何よりも現場での佇まいや控え室にいるときの話し方が勉強になりました。周りをすごく良く見て、巻き込んでお話してくれる方なんだな、と。
ご本人が「演じる役がかなり思いつめている設定だからこそ、現場でめちゃくちゃ喋っちゃうんだ」みたいなことを仰っていて。暗いお話だからこそ、現場でみんなを和ませようとされているのをすごく感じて、素敵な人だと思いました。
森田:そうですね、私もびっくりです。偶然だったんです。『さがす』の方が撮影開始が先だったんですよね。ほぼ同時ぐらいで、全然予期してなくて。衣装合わせした翌週に、また衣装合わせがあって「ここでも一緒なんですか!」って(笑)。
2つの作品で共演してみて思うのは、清水さんの瞬発力のすごさです。言われたことをパッとできてしまう。頭の回転がものすごく速くて、現場にすぐ対応できるんです。どっちの現場にも。もう1つの現場に左右されない切り替えというか、学ぶところが多くて。それは二朗さんにも、(智の娘の楓を演じた)伊東蒼ちゃんにも感じたことですが、みなさん素晴らしかったです。
森田:心から面白いと思える作品に出られるというのは、本当に役者にとって、私も含めてすごく光栄で幸福なことですから、単純にものすごく嬉しかったです。脚本を読んだときに、演技どうこうよりもストーリーだけで、小説にして読んだら面白いと思えるものがまず土台としてありました。そこに監督が、どの役も素敵だと思ってもらえるように役者さんたちのお芝居を乗せてくださっていて。私の出ていないシーンも、脚本として自分が読んできたものよりも濃くなっていくところが衝撃でした。撮影中にその場で作られたシーンもあるし。それはやっぱり、映画ならではの作品作りだと感じましたね。
どんな面でも面白さを感じてもらえると思います。サスペンスも社会問題も、いろいろな要素がギュッと詰まっていて、キャラクター1人1人が一面的ではないところも見ていただきたいです。人って、一見しただけの印象とは別に、誰もがいろいろな側面を持っていること。非情な人間が持つ普通の感性、誰しもがそうなってしまうかも、と思える要素がどのキャラクターにもあるので、共感はできないかもしれないけど、共通点みたいなものは見つけられるのではないでしょうか。難しいかもしれないですが、見てくださる方々には、キャラクターたちを愛していただければうれしいです。
(text:冨永由紀/photo:小川拓洋)
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