1981年3月29日生まれ。米国カリフォルニア州オレンジ郡出身。『トワイライト~初恋~』(08年)のエリック役で注目を集め、同シリーズ全5本に出演。13年に短編映画『You’re Stoopid』(未)で監督デビューを果たし、2本目の長編映画『Gook』(未/17年)でサンダンス映画祭NEXTオーディエンス賞とインディペンデント・スピリット賞のKiehl’s Someone to Watch賞を受賞した。続く『Ms. Purple』(未/19年)もサンダンス映画祭で上映され、その後に全米で公開されている。主な出演作は『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』(09年)『21オーバー 最初の二日酔い』(12年)『リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン』(14年)『サタニック 悪魔に呼ばれて』(16年)など。
『ブルー・バイユー』ジャスティン・チョン監督インタビュー
米移民政策の“すき間”、30年以上前の書類の不備で引き裂かれる家族
家族とは血縁ではなく自らの意志で選ぶもの、それが観客への問い
2021年カンヌ国際映画祭に出品され、8分間におよぶスタンディングオベーションで喝采を浴びた愛と感動の物語『ブルー・バイユー』が、2月11日より公開中だ。
韓国で生まれ、わずか3歳で遠くアメリカに養子に出された青年が、自身は知る由もない30年以上前の書類不備で、国外追放命令を受け、2度と戻れない危機に瀕したらどうするか? アメリカの移民政策で生じた法律の“すき間”に落とされてしまった彼は、愛する家族との暮らしを守ることができるのか。不器用な生き方しかできない男、大きな愛で支えようとする女、義父を失う不安を抱える少女。突然の不幸に揺れ動く家族を美しい映像とともに力強く描く。
監督・脚本・主演を務めるのは、俳優出身の映像作家ジャスティン・チョン。ロサンゼルス暴動を題材にしたモノクロ長編映画『Gook』(17年)、コリアンタウンを舞台にした『Ms. Purple』(19年)でサンダンス映画祭に旋風を巻き起した彼が、舞台を前2作の南カリフォルニアからニューオーリンズに移して、米司法制度に翻弄される家族とその絆を描き出す。
自らも韓国系アメリカ人であるチョン監督にインタビューを行った。
・衝撃を感じてもらいたい/『ブルー・バイユー』アリシア・ヴィキャンデル インタビュー
監督:家族とは自らの意思で選ぶもの、これが作品のテーマなんだ。すでに映画を鑑賞してくれたなら、アントニオからジェシーへの言葉を心に留めてほしい。「僕たちは見た目も違うし血縁もない、それでも君を選んだ」。つまり家族の絆においては、血縁よりも選択という行為の方が強いということ。彼はそうやってジェシーを慰める。それは私から観客への問いでもあり、全編を通して投げかけている問題なんだ。
監督:強制送還にも賛否両論ある。とりわけ今回のように、国外からの養子縁組で金銭が絡んだ場合はなおさらだよ。養子縁組後に国のサポートが受けられず、米移民・関税執行局に国外追放される事例すらある。現実的に多くの事が起きているけど、観客の考えを誘導する気はない。私はただ、一家族の物語を伝えるだけなんだ。
監督:本当に心が痛むよ。アイデンティティに悩みながら育ち、祖国だと思っていた国に追い出され、挙句の果てに自分は米国人ではないと宣告される。想像すらつかない心揺さぶられる出来事だ。今回、私はこの問題と出会って学び始め、広く人々にも知ってもらうために映画を作ろうと思ったんだ。
監督:私は米国生まれだけど韓国人だ。私の映画は全て“切望”を描いている。大きなテーマは2つある。様々な気持ちを表す内なる炎である“恨”。そして兄弟愛や人類愛、同胞などを表す“チョン”。英語では表現しきれないこれらの韓国的な概念を、アメリカという国で映画を通じて形にしたい。それが私という人間の一面なんだ。
私が抱く切望の念は時に“チョン”と重なり合い、本作では自己認識や帰属意識が“恨”として表される。私の全作品で2つのテーマが色んな形で表現されているんだ。本作を通じて世間の人々に気づきを促し、養子となった人たちの声を代弁できたらと思ってる。本作から前向きなものを生み出すことができたら、それこそが本望だと思ってるよ。
・映画好きの貴方の声をお聞かせください/アンケートご協力のお願い
監督:韓国系米国人の養子を私は深く思ってる──まるで兄弟姉妹と同じようにね。でも、これは韓国だけの問題じゃない。インドや中国、アフリカ、メキシコなど世界中から養子縁組される子どもたちがいるんだ。だから本作が問題提起のきっかけとなることを願ってる。そうなれば、本当に素晴らしいことだよ。この映画にその力があれば、人々にアートという枠を超えて大いに前向きなものをもたらすと思ってる。
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