オーストラリアのシドニー出身。『ダークシティ』(98年)、『マトリックス』3部作(99〜03年)、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02年)などで助監督をつとめる。『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟が製作をつとめた『Vフォー・ベンデッタ』(05年)で監督デビューを果たし、この作品でシカゴ映画評論家協会より“将来を嘱望される監督賞”を贈られる。その他、『ニンジャ・アサシン』(09年)も監督。
推理小説化の元祖とも言うべきエドガー・アラン・ポー。40歳の若さで亡くなった彼の最期の数日間をモチーフにしたミステリーが『推理作家ポー 最期の5日間』だ。
ポーの小説を模倣した猟奇殺人が発生。さらに恋人を誘拐されたポーは、模倣犯からの挑戦に巻き込まれていく。史実とフィクションとを巧みに融合させた本作を手がけたのは『Vフォー・ヴェンデッタ』(05年)のジェームズ・マクティーグ監督。『マトリックス』3部作(99年〜03年)や『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02年)などのスタッフもつとめてきた彼に、本作について語ってもらった。
監督:『メメント』(00年)や『プレステージ』(06年)などを手がけてきたアーロン・ライダーというプロデューサーがいて、彼のことを評価していたんだけど、この映画は彼から来た話なんだ。それにポーのファンだったし、ストーリーにも惹きつけられた。
また、ポーの小説はほとんどが短編で、彼自身の人生がかなり陰鬱で悲惨だったこともあり、ポーを題材にした映画の決定版がこれまでなかったんだ。だから、この作品で意義あるチャレンジができると思ったし、彼の人生とフィクションを組み合わせるという点で、今までにないユニークな映画ができるんじゃないかと思ったんだ。
監督:「モルグ街の殺人」「落とし穴と振り子」「アモンティリャードの酒樽」といった短編は、脚本の段階からすでに組み込まれていたよ。でも、よく注意して見れば、「黒猫」や「跳び蛙」などの他の作品もさりげなく練り込まれていることに気づくはずだよ。
監督:彼は様々なタイプの映画に出演してきた素晴らしい俳優だけど、ダークな部分が存分に生かされた作品はこれまでになかったように思うんだ。意外かもしれないけど、ジョンはダークな作風で知られる人々と親交が深い。例えば(ジョニー・デップ主演作『ラスベガスをやっつけろ』の著者でもある異色ジャーナリストの)ハンター・S・トンプソンや、(死んだ動物をホルムアルデヒドで保存した作品群で有名な)現代美術家のダミアン・ハーストなどで、彼自身もかなりダークな一面を持っている。そういった側面をつつけば興味深いポーができあがるんじゃないかと思ったし、彼自身も大いに乗り気で、役作りに情熱を注いでくれたよ。
監督:実際のポーは、博打好きで女グセが悪く、酒や麻薬という悪癖もあり、1歩進んでは2歩下がるような生活を繰り返している、言わばどうしようもない男だった。そのダークな部分こそが、彼の作品に素晴らしい深みを与えていたというのはすごく皮肉だよね。映画ではそういう彼のダークな部分を描くことは避けて通れないと思っていた。一方で、そういう側面ばかりを取り上げると陰鬱になりすぎるので、バランスにも気を配ったよ。
監督:実はとんでもない女好きだったということに、少し驚いたよ。ものすごくロマンティックな男なのに、不幸なことに恋には恵まれなかった。ポーはよく「肺病は我が家の血筋」なんて冗談めかして言っていたらしいけど、実際に彼が愛した女性は養母にしろ最愛の妻ヴァージニアにしろ、みんな肺病で亡くなっているんだ。それはともかく、死の直前には2人の女性と同時に婚約していたくらいだから、相当、恋多き男だったんだろうね。
監督:お気に入りトップ3は「落とし穴と振り子」「モルグ街の殺人」「告げ口心臓」かな。他にも好きな作品はたくさんあるけれど、この3つは何度も繰り返し読んでしまうような大のお気に入りだね。
監督:この映画にはホラーや心理スリラー、アクションといった日本で人気の高いジャンルの要素が詰まっているし、ショッキングなシーンも含めたスリリングなストーリー展開で、日本の人々にも喜んでもらえると思うよ。
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