1967年7月23日、アメリカ・ニューヨーク州生まれ。2014年2月2日、ニューヨークの自宅にて不慮の事故で46歳の若さでこの世を去る。
1990年代初めに『LAW & ORDER』などのテレビドラマを経て、『Triple Bogey on a Par Five Hole』(91年)で映画デビュー。トルーマン・カポーティを演じた『カポーティ』(05年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞。新興宗教のカリスマ的指導者を演じた『ザ・マスター』(12年)では、共演のホアキン・フェニックスと共にヴェネチア国際映画祭最優秀男優賞を受賞した。主な出演作は『ブギーナイツ』(97年)、『ビッグ・リボウスキ』(98年)、『マグノリア』(99年)、『あの頃ペニー・レインと』(00年)、『ミッション:インポッシブル3』(06年)、『ダウト〜あるカトリック学校で〜』(08年)など。
人は皆、正常ではない部分をもっている。そんな、誰もが持つ尋常ならざる本質を描いてきたポール・トーマス・アンダーソン監督が、新たなテーマに掲げたのが、誰かを強力に欲する人間の本質。ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門で4冠を達成した『ザ・マスター』は、新興宗教の教祖であるマスターと“迷える子羊”の愛憎を描いた作品だ。
カリスマ性あふれる胡散臭いマスターを見事に演じたのは、オスカー俳優のフィリップ・シーモア・ホフマン。ヴェネチア国際映画祭では、もう1人の主演ホアキン・フェニックと共に主演男優賞を受賞している。そんな彼に、映画の見どころなどを語ってもらった。
シーモア・ホフマン:僕はこの作品を、父と息子、あるいは指導者と弟子のような関係にあるふたりの男を描いたものだと思っている。どんなタイプのリーダーシップにも当てはまる物語だろう。人々が権力によって導かれるという現象も含めてね。ポールはいろいろなものから影響を受けて脚本を書いたけれど、僕自身はこの役を演じるにあたって、具体的に誰かをモデルにしたくはなかった。もっと純粋なクリエーションにしたかったんだ。ただ、50年代が舞台ということで、当時の人々がどんな雰囲気だったか、ということは参考にしたよ。たとえばノーマン・メイラーの小説に出てくるような人々とか、オーソン・ウェールズなんかをイメージしたんだ。
──あなたが演じたマスターことランカスター・ドッドは、絶大なカリスマ性を発揮する一方、弱さも併せ持っているように感じます。そして、“弟子”であるフレッド(ホアキン・フェニックス)とは、強烈に惹かれ合いながらも反発し合っています。2人の関係をどう捉えながら演じたのでしょうか?
シーモア・ホフマン:確かに2人はお互いを必要としていたと思う。ランカスターは自分自身をもっとコントロールしたいと望み、もがいている。彼がフレディに惹かれたのは、フレディが彼の一部にある、ワイルドな面を象徴しているから。そしてフレディもまた、自分自身に対し悩んでいる。だからこそ2人はお互いに惹かれ合い、その邂逅は感動的なんだ。ランカスターは、フレディによって自分のパワーを感じることができたのではないかと思っている。
シーモア・ホフマン:ホアキンとの共演は素晴らしい体験だったよ。彼はとても献身的で役にすべてを投入する。そういう俳優を見ていると、こちらもとてもインスパイアされるものなんだ。ポール(・トーマス・アンダーソン監督)とは『ブギーナイツ』(97年)、『マグノリア』(99年)でも一緒に仕事をしたけれど、いつも、その場の状況に合わせてやり方を変えてくれる。とても柔軟なんだ。
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