1996年6月18日生まれ、埼玉県出身。2010年よりアイドルグループ「さくら学院」のメンバーとして活動を始めたのち、「Seventeen」の専属モデルとして絶大な人気を獲得。同誌を卒業後は、「25ans」や「ELLE Japan」などでモデルをつとめる。女優としても映画やドラマ、CMで注目を集め、『グッモーエビアン!』(12年)では 第67回毎日映画コンクールと第35回ヨコハマ映画祭で新人賞を受賞した。主な出演作は、『告白』(10年)や『旅立ちの島唄〜十五の春〜』(13年)など。『ダンスウィズミー』(19年)では500人の応募者の中からヒロインに抜擢され、主演をつとめた。
『旅立ちの島唄〜十五の春〜』三吉彩花&大竹しのぶ&小林薫インタビュー
美しい風景と島唄のハーモニーに酔いしれた3人が撮影を振り返る
沖縄本島から東へ360キロに位置する南大東島。この島には高校がなく、15歳の春、多くの子どもたちは家族と別れ、さまざまな思いを心に秘めて島を旅立つ。人生の岐路に立たされた一人の少女の視点を通し、島で生きることや家族との絆を描いた『旅立ちの島唄 〜十五の春〜』。
南大東島に実在する少女民謡グループ「ボロジノ娘」が奏でる美しい島唄も魅力の本作で、映画初主演を果たした三吉彩花、娘を見守る寡黙な父親を演じた小林薫、娘と離れ沖縄本島で暮らす母親に扮した大竹しのぶに、撮影の思い出や見どころを聞いた。
三吉:この作品に参加する前にも、アイドルとして歌をやらせていただいていたのですが、三線と島唄は初めてでした。まったくジャンルは違いましたが、歌によって感動したり元気をもらったりする人がいるというのは同じだと思ったので頑張りました。やっぱり歌っていいなって感じました。
小林:4月に沖縄で行なわれたプレミア上映会に行ってきたのですが、そこでボロジノ娘たちが(南大東島の島唄の)「おじゃりやれ」を歌い、そのあとシークレットゲストでBEGINが主題歌の「春にゴンドラ」を、さらに「島人ぬ宝(しまんちゅぬたから)」をみんなで歌ったんだよね。僕ら役者は2時間ぐらいの作品を作ってやっと感動してもらえたりすることがあるけれど、歌は1曲聴くだけで、いろいろなものが伝わってくる。BEGINの人柄も素晴らしくて、僕は『良い人になろう』って思いました(笑)。
三吉:撮影に入る2ヵ月前ぐらいから練習を始めたのですが、触るのも初めてだったので大変でした。特に三線を弾きながら歌うのがとても難しくて……。でも私が歌う「アバヨーイ」は、作品のなかでとても大事なシーンなので、自分が納得いくまで練習をしようと思って臨みました。あまり余裕がなくて大変でしたが、自分のやれることはやったので、悔いはないです。
小林:個人的には家族の情愛みたいな作品は苦手で、自分のなかでちょっと引いてしまう部分があるんです。でもスタッフをはじめ作品に関わる人みんなが、吉田(康弘)監督のために集まってきた。若い監督なのですが、彼の人柄に触れて、この作品に入っていこうって踏み切れましたね。監督と話をするなかで、家族の情愛を前面に出すのではなく、上手い具合の引き算が大事だねという話も出来ました。
大竹:「また吉田監督と仕事が出来るんだ!」というのが作品へ向かう一番の気持ちでした。監督デビュー作品の『キトキト!』もご一緒させていただいたのですが、(小林)薫さんが言うように、みんながヨッシー(吉田監督)の作るワンカットに全力投球していて、一緒に映画を作る喜びがあったんです。私が演じた母親は子どもと離れて暮らすという選択をしていて、その部分は「なぜなんだろう?」っていう疑問はあったのですが、吉田監督を信頼していれば大丈夫だと思ったし、話をしながら作り上げていくうちに、上手くいったなという実感はありました。
三吉:この脚本をいただいたとき、ちょうど私も15歳で、親元を離れた直後の撮影だったので、いろいろな部分で共感できるなっていう気持ちでした。
大竹:私は16〜17歳のころ芸能界デビューしたから、そのことがターニングポイントといえばそうなりますかね。でも当時は、周りが動いてくれて、自分では何も考えていなくて……。知らない間に楽しい汽車に乗っていて、気がついたら「お芝居ってこんなに楽しいんだ!」ってね(笑)。でも芸能界のお仕事をしながらも、普通の感覚は持っていなくてはいけないんだという気持ちがあって、高校だけは卒業したいという思いは強かったですね。そのことが私にとっては決断だったかもしれません。
小林:僕は10代後半は何も考えてないでボーッとしてたり、ちょっとした悪さもしたりして(笑)。そんななかで、芝居をやりたいって気持ちが出てきて養成所みたいなところに入ったんです。そこでのいろいろな出会いが、今につながっているという部分はありますね。
大竹:娘と離れて暮らしている設定だったので、他の人よりも撮影期間は短かったのですが、娘の旅立ちのシーンは印象に残っています。セリフはなかったのですが、娘の旅立ちを大事に祝いたいという気持ちと、そばにいられなくてゴメンねという思いなど、(三吉演じる)優奈の15年間をしっかり表現できたらいいなと思って臨みました。
小林:僕はいろいろなシーンを通じて「男ってすごい寂しい生き物だな」って感じました。特に娘にとって母親は、どんなに離れていても、会えばすぐにスキンシップが出来るし距離が縮まるけど、父親はずっと一緒にいても、どうしてもぎこちないし、距離を感じてしまう。なんとも言えない寂しさが男親にはありますね。
三吉:好きなシーンはたくさんあるのですが、高校受験の面接のシーンは印象に残っています。初めて優奈が自分の思っていることを人に打ち明ける重要な場面でもありますし、自分と重ね合わせて気持ちがシンクロした部分もありました。
私自身も進路を決めるとき、埼玉から東京へ出てきた経験があり、親と離れて暮らすことになったんです。でもその時は距離が近いから、また帰ってくればいいぐらいに軽い感じの別れだったのですが、面接のシーンを演じているうちに「お父さんは寂しいって思っていたのかな?」とか私は一人っ子なので「娘が自分の所から離れていくのってどんな気分なのかな? 心配が多いのかな?」とかいろいろ考えたりしました。そういった部分は作品のテーマなのかなって思います。
──絶海の孤島での撮影は非常に刺激的だったようで「開放感がいっぱいで、本当に良いところでした。是非また行って、今度は釣りをしたいです」と目を輝かせて当時を振り返った三吉。「ボロジノ娘の『アバヨーイ』は家族への感謝の曲、BEGINさんの主題歌『春にゴンドラ』は“行って来いよ”と島を離れる子どもたちを送る曲。自然と島唄の融合を楽しんでください」と見どころをアピールした──
(text&photo=磯部正和)
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