『陽だまりハウスでマラソンを』ディーター・ハラーフォルデン インタビュー

ドイツの国民的俳優が「負けないこと」の大切さを力説!

#Dieter Hallervorden

人生を人任せにしないことに共感した

老人ホームでの生活にうんざりした70歳を超えたおじいさんが、マラソン大会への参加を表明。周囲の反対を受けながらも、仲間たちに応援されながら奮闘する姿を描いた『陽だまりハウスでマラソンを』。人生の最終章をどう生きるかを描いたドイツ発の感動作が、3月21日より公開される。

フルマラソンに挑戦する主人公パウルじいさんを演じたのは、ドイツの国民的喜劇俳優ディーター・ハラーフォルデン。マラソン初挑戦ながらも役作りのために9キロの減量をして撮影に臨み、史上最高齢でドイツ映画祭最優秀主演男優賞を受賞した。そんな彼に作品の魅力を語ってもらった。

──22年ぶりの主演作ですが、出演の理由は?

ハラーフォルデン:まず、台本にとても共感しました。それは、主人公パウルの人生哲学が私とかなり近いからでした。止まってしまったら、負けてしまう。転んでも必ず立ち上がる。何事もあきらめないで、何かのゴールを持つこと。人任せにしない。人生の後半、3分の4くらいになっても他人に自分のことを委ねないということです。どんな運命で、どんなことが起ころうと、自分の意思で生きていくということです。

『陽だまりハウスでマラソンを』

──劇中での夫婦の合い言葉、「わしらは風と海」が、とても心に残りました。どのような意味が込められていると思いますか?

ハラーフォルデン:風のない海というのはめったにありません。海には常に風が吹いている、時には強い風の日もあったりします。海と風は一緒にたわむれているのです。風によって、海には高い波も起こります。風と海というのは美しいイメージですね。お互いが緊密な関係にあり、影響を与え合っていますね。

──9キロの減量で望んだマラソンはいかがでしたか? マラソンは初挑戦ということですが。

ハラーフォルデン:ベルリン・マラソンの日の撮影は特に大変でした。まず、長距離のテンポを保つことが大変でした。それから何度も撮り直しがありました。その理由は他のランナーが私に気づいたからではありませんでした。4メートルの高さからの望遠カメラの撮影だったのですが、こちらは爽快に走っていても、カメラマンが私を見つけ出せなかったりしたことが多かったですね。辛かったのは同じ道程を何度も走らされたことです。でも、最後にはスタジアムで観客の皆さんがとても満足して喜んでくれました。

私の演技に批判的だった人も本作は気に入ってくれました
『陽だまりハウスでマラソンを』

──本作で史上最高齢の主演男優賞を受賞されましたね。感想は?

ハラーフォルデン:20年以上、スクリーンに登場していなかったので主演男優賞の受賞にはとっても驚きでした。これまでも顔は知られていましたが、コメディアンとしてです。キャラクターが強かったので評論家の中には私を蔑んで見る人もいました。私を少しばかにしていた人も、この映画で私が大きなスクリーンで演技ができる俳優だという認識をもち、意見を変えましたね。長い間、コメディアンとしての私の演技に批判的だった人もこの映画は気に入ってくれました。

──ドイツでのお客さんの反応は?

ハラーフォルデン:評判は一貫して良かったです。98%の映画を見てくださった方がとても感動してくれました。正直に演技していたと言われました。世代を超えた色々な方々に見ていただけました。子どもから80歳を超えるお年寄りまでが喜んでくれました。

──日本では最近マラソンブームですが、「走ること」の魅力についてどう考えますか?
ディーター・ハラ―フォルデン 

ハラーフォルデン:マラソンは人気のスポーツですが、長い時間をかけて、基本から準備する必要がありますね。医師の診断、食事療法、トレーニング。走りたいという欲求は健康的なことだと思います。しかし、時には身体が危険信号を出したりしますね。目標を高くしすぎないことが必要です。私は仕事だから走ったわけですけれど、気をつけないといけませんね。ハーフマラソンくらいにしておくとか。年をとってからはすごい記録は残せません。あくまでも自分への挑戦ということですね。とにかく、健康には充分に注意してください。

──見どころを教えてください。

ハラーフォルデン:この映画はギブアップしない、立ち止まらない、ゴールを目指して出来る限りのことをするという、人生の「やる気」の話です。日本人はゴールを目指して、エネルギーいっぱいでチャレンジすると聞きます。こうした人生の戦いは、他の国に住んでいても同じだということを、この映画を通して伝えたいですね。

Dieter Hallervorden
Dieter Hallervorden
ディーター・ハラ―フォルデン 

1935年、デッサウ出身。22歳で当時のドイツ民主共和国を離れ、西ベルリンのトリビューネ劇場と最初の契約を結ぶ。1960年、フリッツ・ラング監督の『怪人マブゼ博士』に端役で出演し映画デビュー。1960年代末にはテレビ番組や映画に数多く出演し、喜劇役者や風刺作家としての地位を確立。72年にはロマン・ポランスキー監督作『ポランスキーの欲望の館』にも出演。1975年にどたばた喜劇ショー『ノンストップ・ナンセンス』でブレイク。1980年まで続いたこの番組でカルト的な地位を獲得した。本作で史上最高齢でのドイツ映画賞最優秀男優賞を受賞したほか数々の賞を受賞。

Dieter Hallervorden
陽だまりハウスでマラソンを
3月21日より公開
[監督・脚本]キリアン・リートホーフ
[出演]ディーター・ハラーフォルデン、タチア・サイブト、ハイケ・マカッシュ
[原題]Back on Track
[DATA]2013年/ドイツ/アルバトロス・フィルム/115分